3人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「諦めた方が良い」
十八歳の少女に、教授である我瑠楽は告げる。その言葉を耳にした少女、香栗の瞳は絶望に染まっていた。
窓からか細い日差しが当たる、乱雑に資料が置かれる畳の部屋。そこは我瑠楽にとって書斎のような部屋だった。雲が流れ、香栗のきれいな栗色の長い髪が日に当たる。香栗は「何故でしょうか」と訊ねた。我瑠楽は、青い耳飾りを触りながら、答えた。視線は香栗ではなく、低い机にある資料に向けられていた。
「香栗。君の知力、発想力は底が無いと思うほどだ。だが、非力すぎる。あやかし学はやめておいた方がいい」
この世界には、「カクリヨ」と呼ばれる世界から来訪されたと噂のある、摩訶不思議な生物が存在する。通常生物よりも大きな体を持つもの。ある程度の火を操れるもの。突然現れたのではないかと思われるような、進化のルーツが不明なもの。龍のようなもの。未知を具現化させたようなそれらの生物を人々は「あやかし」と呼ぶ。そのあやかしを研究する学問が「あやかし学」である。
最初のコメントを投稿しよう!