【J庭54サンプル】ピカレスク・ロマンチシズム

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 眼鏡を取り去った冴島の顔が予想外に幼く見えて、思わずまじまじと観察する。目の下にはくっきりクマが見て取れた。  田川の言うとおり弁護士の業務の関係で多忙を極めていたのかもしれないが、要因は自分にあるのかもしれないと矢乃は思った。矢乃が軽率に取った行動のせいで、冴島は夜も眠れないほど傷つき苦しんだ。そう思うと、申し訳ない気持ちが強くなる。  冴島が眠るのとは別のベッドの淵に腰を下ろし、そのまま横向けに倒れた。そうしてしばらくの間眠る男を眺めていた。
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