海に消える道

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海に消える道

(わたる)と並んでいると、穏やかならぬ感情に支配されることがある。 私にはない伸びやかな四肢、日に焼けた張りのある肌、黒々と艶のある髪。 老いに片足をつかまれ、緩やかに衰えていく私とは対照的に、未来を見据えて走り出すことのできる身体が羨ましい。 中学一年生の孫の(わたる)は、私にはないもの、私が失いつつあるものを持っている。 だから常々、その眩しさに胸を焦がされる。 一方でーー。 私は彼が抱える重大なを知っている。 欠点とはずいぶんな言い草だが、そう考えているのは渉本人だ。 私はそうは思わないから、特性と言い換えることにする。 渉の特性、渉の性質。 渉の瞳は、見えざる者を映す。 魂となって、思念となってこの世にとどまり続ける者を。 つまり、渉は霊的なものを見て感じることができる。 我が孫ながら実に不思議な存在だ。 だから私は彼のそばに立つとき、あらゆる感情に満たされる。
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