君とスケッチブック

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君とスケッチブック

光が射す机に置いてあるスケッチブック。瞳から溢れ出す涙を袖で拭ってそれを手に取った。パラパラとめくる。スケッチブックにはイラストではなく、楽譜が書かれていた。あぁ、本当君って奴は。何で自分を犠牲にしてまで、楽譜を守るかなぁ……? 君――アイツは事故が起きた時、自分より手に持っていたスケッチブックを守ったらしい。そこは自分を守る所だろ、だなんて皆思っている。本当、馬鹿。 ――音楽は僕の生命なんだよ 昔、アイツが言っていた言葉が脳内を駆け巡る。スケッチブックをパラパラとめくっていると、最後のページにだとり付いて閉じようとしていた。だが、1つの言葉に引かれた。その言葉を見て思わず笑みがこぼれた。ゆっくりとスケッチブックを閉じて、カーテンの隙間から入り込む日差しを見つめた。 『××と過ごしている日々は、自分が考えていた日々よりも楽しく、実に充実している。とても幸せだ。こんな幸せで良いのだろうか? そんな疑問が浮かび上がる。だが、これだけは分かる。××と友達になれて良かった、と』
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