5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「有名になりてぇー!」
へたった座椅子に背を預け、俺は両手を突き上げた。
値段だけで決めた学生向けのワンルームアパートだ。大学進学を機に始めた独り暮らしは、一年も経たず飽きが来ている。
「あと、愛されてぇ……」
恋人や友達なんて高望みはしないから、せめてひとときの承認が欲しい。
コタツに入ってノートパソコンと向かい合う日々を変えたい。
けれど具体的な手段が思い浮かばないから、結局こうしてパソコンでひたすらに動画投稿サイトを貪っている。
「クッソ、登録者八百万人とかエグすぎだろ」
有名配信者のゲーム実況だ。
画面の右側では視聴者からの大量のコメントが、ときおり『投げ銭』と共に流れている。
配信者の気を引きたい視聴者が、金を払ってコメント欄に色を付けることで自分を目立たせているのだ。
「俺なら無料(タダ)で構ってやるのになー……」
コンビニの冷めたフライドチキンをかじりながら画面の右上をクリックする。
新たに表示されたのは『RYOちゃんねる』だ。
俺の本名である涼太郎(りょうたろう)から取った。
「登録者十九人って何だよ、親戚より少ねーわ。……ん?」
見慣れない赤の通知マークが表示されている。
三日前に投稿した『台所の壁に生えてたキノコ食ってみた』にコメントが付いたのだ。
「マジか、初コメ来たっ!」
再生数二十三回でコメントが付くのは奇跡でしかない。
頬がめきめきと紅潮するのを感じながらメッセージを読む。
最初のコメントを投稿しよう!