第五章

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そして両手で冬二郎さんの頬を包み込んで引き寄せキスした。強く押し付けただけのキスはすぐに終わり、そのまま冬二郎さんを見つめた。 「私が選んだ男よ。あんまり卑下するようなこと、いわないで」 「……」 「10歳の時から恋して来て、やっと手に入れた男なんだから絶対に手放したりしない」 「……莉世ちゃん」 「だからもう……何もいわないで」 「……うん、ごめんね」 ギュッと包んだ冬二郎さんの頬は少しザラッとしたけれど、その温もりを感じると愛おしいという気持ちがドンドン溢れて来て堪らなくなった。 「好き……冬二郎さん、大好き」 冬二郎さんの唇に何度もチュッとキスをした。それを受けて冬二郎さんも積極的に私の唇を啄ばむ。 「俺も……好き」 「……ん」 「莉世ちゃんが好きで、好きで……欲しくて堪らないよ」 「……!」 その時冬二郎さんの下半身の変化に気が付いた。 「……ねぇ、莉世ちゃん」 「……はい」 「ちょっと……休憩、しに行かない?」 「っ」 耳を甘噛みされながら囁かれた冬二郎さんの誘惑に私が逆らえるはずがなかった。 そうして私たちは火照る体を持て余しながらカラオケボックスを出て別のふたりっきりになれる密室がある場所へと移動したのだった──。
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