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隼人は精一杯、他人に自分を良く見せていた。
「そうだ、練り香水をまた買って来てあげて。かなり愛用していたみたいだから」
凛子が遺影の前に空になった練り香水の容器を置いた。
「似合わねえ……」
頭の中でうるさいぞと、そっぽを向く隼人がほんの少し愛しく思えた。
「新しい発見か……確かにな」
「え?」
凛子が不思議そうに正人を見た。
「いや、いいんだ」
思い出したくない過去だが、綺麗さっぱり消えるわけではない。そして、これからもその上に良い思い出も嫌な思い出も変わらず積もり積もっていく。そして気まぐれに、金木犀の残り香の様に優しく心の中で漂うものなのかもしれない。
了
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