ー 不安 ー

2/6
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
是周の住む場所までは、車を走らせればそれほどわたしの家から遠くはない。思ったよりも早く着いて、いつもの場所に車を止めてエンジンを切った。 車から降りようとして、ふと足が止まる。 会って、くれるだろうか――そんな不安が頭に浮かんだ。しかし、すぐにその考えを振り払い、わたしは外に出た。 とにかく、会おう。このまま彼に会えなくなるのは絶対に嫌だ――。 わたしは林の入り口に立った。心の準備はできている。しかし、この向こう側へと足を進める決心がなかなかつかなかった。とは言え、引き返すという選択肢はもちろんない。 しばらくの間、わたしは林の奥を透かし見るようにしながらその場に立っていた。 風がふわりと舞い、ワンピースの裾を揺らす。ひらりと落ち葉が目の前を横切った。 わたしは顔を守るように手をかざし、目を瞑った。次の瞬間、近くに人の気配を感じる。 恐る恐る目を上げて、わたしは息を呑んだ。 会いたいと思っていた人が、そこに立っていた。 まずは謝らなければ――。 そう思うのに、言葉が出てこない。わたしはただじっと、その人――是周を見つめた。 地面に落ちた枯れ葉や枯れ枝を踏んで、彼はゆっくりとわたしに向かって歩いてきた。 責める言葉を投げつけられるかと、わたしは息をつめて彼を凝視した。 目の前までやって来た是周は、無言でわたしを見つめている。表情が読めないその面は、ますます作り物めいて見えるほど美しい。 わたしはごくりと生唾を飲むと、顎を上げた。 「昨日は会いに来られなくて、ごめんなさい。約束したのに……」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!