<34・レネと天使とマシンガン。>

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<34・レネと天使とマシンガン。>

 ガブリエル隊のメンバーは相当混乱している。隊長のルーイが囮に出てくるなんて“あるはずがない”と思ったのがまず大きいのだろう。  隊長がやられたら即座にゲームは終わる。だから隊長は、最奥の陣地で守られていなければいけない、と。ドリゼラだって本当は最前線に出たいところ、やや後ろに引っ込んで後方支援に回っている状態だったのだから。  だから、すぐに動かなかった。  弱点を自ら晒す馬鹿などいるはずがない、何か理由があるに決まっていると思ったから。  “そんなカードを切るはずがない”と、彼らが皆思ったから。 ――つまり、それが最大の隙を作る!あんたの考えは正しかった!  ルーイが真正面から堂々と“一人”で出ていったことで彼らが動揺し、動きが止まった。確かに、何の理由もせずに自ら弱点を晒すなどあり得ない。  同時に、彼らにとってはチャンスに違いなく、集中砲火をするまたとない機会となった。まさかもう毒針に気付かれたと思っていなかったのも大きいのだろう。――それこそが、レネたちの狙いであるとも知らずに。  ルーイにガブリエル隊の視線が全て釘付けになった瞬間、レネたちは敵陣に一斉に走りこんだのだ。ルーイ以外の残る四人、全員である。向こうはルーイに気を取られているし、仮に一人二人に気付いたところで同時に突っ込んでくる四人全員を止めることは難しい。  さらにはそのルーイも、捨て駒となったわけではない(そもそも彼がやられたらゲームオーバーなのだから捨て駒になんぞできるはずもない)。  敵が毒針をどう発射してくるかわかっていない以上、それを躱すことは困難を極める。だからルーイも毒針を食らうことは覚悟の上だ。だが、このゲームの勝利条件はあくまで相手にペイントをつけること(弾でもナイフでも)。毒針を受けただけではやられたことにならない。向こうもわかっているから、毒針を撃った上で動けなくなった獲物にペイント弾を当てるということをしてきていたのである。  だが、もしその“必勝”のはずの毒針が効かなければ? 『観覧しながらワインが振る舞われることになってるんですが……そこに毒を仕込まれても困りますからね。予め、うちのホストに配るお酒は毒見をしておこうということになったのです。ワイングラスなどはこちらで用意しますし、そちらに毒が混入する恐れはないはずなので』 『あんたが毒見しないのは意外』 『私は不適任なのですよ。元々体質上毒に強いんです。だから私が毒を飲んでもあまり意味がないのですよね。まあ……かつて散々いろんな薬を盛られたせいで、体が耐性を持ってしまったというのもあるでしょうが』  あの会話が、まさにヒントだったわけだ。  他の隊員ならともかく、ルーイは毒を多少喰らっても倒れない。そして、ペイント弾の方なら零距離でない限り避けられるだけの身体能力がある。 「どわぁっ!」 「きゃあっ!」  突然死角から現れたレネたちに、ガブリエルのメンバーは対応しきれない。一人、二人と次々ペイント弾を当てて勝利をもぎとっていく。
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