はじまりのワルツ

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「会長。俺、この半年で五センチ伸びたんだ」  シークレットブーツをぷらぷらさせながら、瑠偉は言葉を続ける。 「まだ十六だし。きっともっと伸びるよ」  ガタンと椅子を鳴らしたかと思えば、瑠偉がぴょんと私の前にやってきた。 「今はまだこの高さだけど。よく覚えておいてよ。あっという間に伸びてやるから」  真正面から私の視線を捕まえる。普段のおちゃらけじゃない、挑むような瞳。 「その時には逃さないからね。ちゃんと俺の気持ち、誤魔化さずに聞いてよ。紗耶香」  普段の『会長』呼びじゃない事に、また心臓が騒ぎ出す。そんな私に気づいてか、ふっと笑ったかと思えば、微かな温もりと柔らかい感触が一瞬だけ頬をかすめていった。 「っっ!?」   「これくらいのご褒美、もらってもいいでしょ?」 「…………よくなぁぁぁぁいっ!」  なんてやつ、なんてやつ!  こっちの準備とかお構いなしじゃない。  きっと身長なんて関係なくて。  私達の関係性が変わる日はすぐそこにきているのかもしれない。  だけど、今はまだ。  私は『会長』で。瑠偉は大切なかけがえのない『片腕』のままで。ムカつくと思いながらも心地いい関係をもう少しだけ。
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