3章:転機の領地視察

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「……セレーナ様? どうしたのですか?」 「いいえ、なんでもありません……さあ、授業を続けましょう」    『セレーナ様』と呼ばれるたび胸が痛むが、ベアトリスは苦い気持ちに蓋をして、笑顔でいつも通り講義を続けた。 「セレーナ様、ひとつ質問があるのですが、よろしいでしょうか?」 「ええ、どうぞ」 「呪具とは、どのように作られる物なのでしょう? 以前、聖女ベアトリス様が呪具を使用していたと聞いて、気になってしまって」  不意打ちで突きつけられた自身の過去に、ベアトリスは一瞬動揺した。  しかしすぐさま平然を装い、セレーナらしく朗らかに答える。 「呪具の作り方は、実は聖魔道具と同じです。物に神聖力を込めれば聖具に、逆に悪意や怨念、殺意を注げば呪具になります。みなさん、呪具の作成と所持、使用は重罪です。くれぐれも安易に手を出さないように」    きっとこれが、自分の最後の教えになるだろう。
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