噂のうどん屋さん

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 義明は若いサラリーマン。東京で一人暮らしをする独身だ。駅の近くにあるアパートで独り暮らしをしながら、暮らしている。そこそこ仕事は順調にできていて、みんなから信頼されている。  今日も義明は、いつものように最寄りの駅にやって来た。駅は高架になっていて、改札は1階にある。改札口の前には、ロータリーがあり、バスが発着している。この時間帯は穏やかだ。朝の騒然とした雰囲気とは全く違う。 「今日も疲れたな」  義明は疲れていた。今日は金曜日だ。明日は休みだ。明日はゆっくり休んで、仕事の疲れを取ろう。 「ん? このうどん屋さんは?」  と、義明は駅前にできたうどん屋が気になった。数週間前にできたそうだが、うどんがおいしいらしい。本当においしいんだろうか? 自分で確かめたいな。 「入ってみようかな?」  義明はうどん屋に入る事にした。うどん屋はそこそこ人が来ている。なかなか評判のようだ。 「いらっしゃい!」  店員は元気な表情だ。聞いているだけで、元気が出てきそうだ。 「それじゃあ、かけうどんで」 「かしこまりました。かけうどん一丁!」 「へい!」  それを聞いて、店員はうどんを作り始めた。ここは立ち食いのうどん屋のようで、すぐにできて、すぐに食べれるのが自慢のようだ。  と、義明は張り紙が気になった。ここの稲荷寿司は評判のようだ。どれだけおいしいのか、自分で確かめたいな。 「ここって、稲荷ずしがおいしいのかな?」  数十秒後、うどんが出来上がり、店員が持ってきた。安くておいしいなんて、最高だな。 「おまちどう、かけうどんっす!」 「ありがとうございます」  義明は七味をかけ、うどんを食べ始めた。だしはあっさりとしていておいしい。それに、麺はなかなかコシがある。 「なかなかうまいな」  ここに来ている他の人も、おいしそうに食べている。中には稲荷寿司とセットで食べている人もいる。 「なかなかおいしいからまた来ようかな?」  義明はあっという間に食べ終わった。また来ようかな? 「250円です」 「ありがとうございました」  250円ちょうどを出した義明は、店を出て行こうとした。だがその時、店員の1人が気になった。尻から尻尾が生えている。まさか、キツネが化けている? いや、そんなの作り話だ。 「えっ・・・。さ、錯覚だよな・・・」  義明は何事もなかったかのように店を出ていった。おいしかったので、また来ようかな?  またある日の事。お昼のうどん屋では、主婦が来ていた。家事を終えて、ここで一休みをするようだ。この時間帯もそこそこ人が来ている。  そんな中、主婦の浪子(なみこ)は悩んでいた。夫の恵三(けいぞう)の帰りが遅いのだ。そのため、2人で夕食を食べる事があんまりない。不安で不安でしょうがない。不倫しているのではと思ってしまう。 「ねぇ、最近、恵三さんがおかしいのよ」 「どうしたの?」  隣で一緒にうどんを食べている主婦も気にしている。 「最近、帰りが遅いの。何かあるんじゃないかと思って心配で」 「うーん・・・」  隣の主婦も考えた。一体どういう事だろう。やっぱり気になる。  と、その様子を店員が見ている。何かを考えているようだ。 「どうしようか?」 「あの人、気にしてる」  別の店員も、その様子を見て、何かを考えている。 「よし! 君、キツネになって捜査に出てくれ!」 「わかった!」  実はこのうどん屋はみんな、キツネが化けて営業していたもので、情報屋という裏の顔も持っていた。彼らはすでに、恵三がどこで何をしているのかは知っている。この辺りのあらゆる情報はここに入ってくるのだ。  その夜、浪子の家の近くに、2人の店員が来ていた。今回の計画では、1人がキツネになって、浪子を誘い出し、恵三のいる居酒屋に誘おうというのだ。 「この人か」 「うん」  と、1人の店員がキツネになった。キツネは玄関の前にやって来た。これから浪子を誘おうというのだ。  浪子は1人は寂しそうにしていた。夫はどこに行ったんだろう。早く帰ってきてよ。一緒に寝ようよ。  と、浪子は家の前にキツネがいる事に気が付いた。キツネがここに来るなんて、珍しい。 「あら、キツネさん」  と、キツネはどこかに行く。どこに行くんだろう。浪子は家を出て、後をつけ始めた。 「どこ行くのかな?」  浪子は興味津々に後をつけていた。その先には何があるんだろう。きっと、重要な場所かもしれない。  浪子は駅前までやって来た。この近くには居酒屋があり、夜遅くまで営業している店もある。まさか、恵三はこの辺りの居酒屋で飲んでいるんだろうか? だったら、誘うはずだ。絶対におかしい。  キツネがやって来たのは、駅から少し入り組んだところにあるバーだ。まさか、ここにいるんだろうか? 「ここ、どこ?」  このバーの事は全く知らない。試しに浪子は入ってみた。すると、そこには恵三がいて、女とイチャイチャしていた。まさか、ここにいるとは。 「あっ・・・」  浪子の姿を見て、恵三は呆然とした。浪子がここにやってくるとは。どうしてわかったんだろう。 「浪子・・・」 「あなた、何をしてるの?」  浪子は怒っている。明らかに不倫している。私だけを愛していると思ったのに。 「ご、ごめんなさい・・・」 「早く帰るよ!」  浪子は料金を支払って、恵三を力ずくで引っ張った。恵三はがっかりしている。まさか、ここにいるのがばれるとは。 「そ、そんな・・・」  2人は出口にやって来た。そこには、うどん屋の店員がいる。まさか、あの店員が誘ったんだろうか? と、恵三は店員の尻から尻尾が生えているのが見えた。まさか、キツネが化けていたとは。 「あっ、あのうどん屋の店員・・・。まさか・・・」  恵三は浪子に引っ張られて、帰路に就いた。店員はその様子を見て、クスっと笑っている。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!