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「翔くんも綺麗に生きれてないの?」
「いや、僕は綺麗に生きることが出来てるよ。だって性欲無いし。」「絶対嘘。」
「本当だよ。前の人とおしまいになってから、もう2年もしてない。そんで特にしたいなって気持ちも無い。1人ですることも月1くらいじゃないかな。」
「絶対嘘。」舞香はケタケタ笑う。この子はよく笑う子だ。
絶対なんて無いよ、と僕は返答するとドロンと電話が切れた。しり切れとんぼのようで、少し腑に落ちない終わり方だ。目の前には透明なグラスに注がれている飲みかけの水が波打ってる。意識していなかったが、なるほど。今日は少しばかり心が踊ってたらしい。こんなにも波打つのは久ぶりかもしれない
。
切れた電話の流れから、アプリを開く。特にいいねが来ているわけでもマッチングをしているわけでもない。アプリとはこんなもんだ。多少顔立ちが整っていれば良いのだが、プロフィールをよく書いても、素敵な景色の写真をこさえても、いいねの返答やマッチング率が
上げるわけではない。結局顔や年収が全てなんじゃないかと思えてくる。
いいねできる数は、無限ではない。1か月にせいぜい30いいねの付与でマッチングするのは良くて1人か2人。その雀の涙のマッチングですら、挨拶すらされず、何も始まらないことが多い。いいねを送ってもあまりにもマッチングしないから、特に好みではない女性のにもいいねを送る。そして、いいね可能数が底を尽き、いいね数を課金で購入する。購入したいいねを送る。マッチングしない。いいね数が底を尽きる。いいねを課金購入。世の中はよくできている。需要と供給を理解し、絞れる者からしっかり毟り取れるようなシステム構築が素晴らしい。
いいねをされた数はプロフィールに表示されており、女性は300越えが普通であり、これはモテそうだなと思う人は500を越えている。それに対して男性は50あればいい方らしい。そんな環境下で、自分の意中の人を打ち抜けることはほぼ絶対に不可能だろうなあ、と思いながら今もいいねを押しまくっている自分が虚しくなる。そんな中で今電話をくれた舞香は希少な存在なのかもしれない。
そんな舞香からまた、電話が来る。
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