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グループ展の会場は銀座の貸し画廊で、遥二は恐る恐る重いドアを開けた。
「あ。いらっしゃい」
奥でカメラマンと打ち合わせをしていた女性が遥二に気づいて、華奢な右手を軽く上げた。
藤田だと気づくのに一瞬時間がかかった。
ストンとまっすぐな黒髪を眉上で切り揃えて、薄い唇に真っ赤なルージュを塗っている。
細身な全身から、和のアーティストの雰囲気が漂っているようだった。
「こんにちは」
「来てくれてありがとう。少し見ていてもらえる?」
「はい」
「ね、藤田さ〜ん。ここやっぱりさぁ……」
カメラマンが藤田に話しかける。しばらくは忙しそうだ。
藤田に言われた通り、書道展を見て回る。グループ展には5人の書道家が参加している。
大学時代に書道を嗜んだことを思い出し、遥二は楽しんでそれぞれの作風を鑑賞した。
「じゃあ秋山さん、田村さんと打ち合わせお願いします。中島くん、お待たせ」
カメラマンに声をかけてから、藤田は改めて遥二を歓迎した。焼き菓子の手土産も喜ばれ、場所を移して話すことになった。
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