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ここにいる盗賊たちは、全員俺の好みに当てはまらない。……と、違う。そういう心配をしている場合じゃなくて、だな……。
「お前ら、とりあえずこのにーちゃんをはこ――」
男が、振り返った瞬間だった。その男の顔に、こぶしがめり込んだ。……うわ、痛そう。とか、そういうことを思っている場合じゃない。
「あ、あにっ!」
その男に近づいて来ようとした手下が、蹴られた。身体が吹っ飛んで、壁にぶつかる。……修理費、とんでもないかもしれない。
(俺の給料から引かれませんように……!)
必死に、それを祈っていれば、不意に誰かに手を掴まれた。顔を上げれば、そこにいるのは……美しい青色の髪を持つ、精悍な顔立ちの男。
「フリント。……大丈夫か?」
「……え、えぇ、まぁ」
何処となく切羽詰まったような表情を浮かべる、その男。……この人たち、基本的に無表情だから、こういう感情を露わにするの珍しいなぁと。って、そうじゃない。
「ジェム。……この男たち、どうします?」
側から、低い声が聞こえてきた。そちらに視線を向ければ、これまた精悍な顔立ちの男が、いる。その茶色の目に、怒りの色を宿した男。……なんだか、背筋がぞっとした。
「とりあえず、適当に縛り上げておけ。……フリントに触れようとした罪は、重い」
目元を吊り上げながら、ジェムと呼ばれた男がそう言う。
「この綺麗な肌に傷をつけようとしたどころか、襲おうとしたなど言語道断だ。……とりあえず、手足を切り落とすか」
「そうですね。それくらい、当然――」
「いやいや、やりすぎです!」
この二人に任せておいたら、とんでもないことになる。そう思って、俺はそう叫んだ。
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