1.ギルドでも有名な二人組

10/13
353人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
 ここにいる盗賊たちは、全員俺の好みに当てはまらない。……と、違う。そういう心配をしている場合じゃなくて、だな……。 「お前ら、とりあえずこのにーちゃんをはこ――」  男が、振り返った瞬間だった。その男の顔に、こぶしがめり込んだ。……うわ、痛そう。とか、そういうことを思っている場合じゃない。 「あ、あにっ!」  その男に近づいて来ようとした手下が、蹴られた。身体が吹っ飛んで、壁にぶつかる。……修理費、とんでもないかもしれない。 (俺の給料から引かれませんように……!)  必死に、それを祈っていれば、不意に誰かに手を掴まれた。顔を上げれば、そこにいるのは……美しい青色の髪を持つ、精悍な顔立ちの男。 「フリント。……大丈夫か?」 「……え、えぇ、まぁ」  何処となく切羽詰まったような表情を浮かべる、その男。……この人たち、基本的に無表情だから、こういう感情を露わにするの珍しいなぁと。って、そうじゃない。 「ジェム。……この男たち、どうします?」  側から、低い声が聞こえてきた。そちらに視線を向ければ、これまた精悍な顔立ちの男が、いる。その茶色の目に、怒りの色を宿した男。……なんだか、背筋がぞっとした。 「とりあえず、適当に縛り上げておけ。……フリントに触れようとした罪は、重い」  目元を吊り上げながら、ジェムと呼ばれた男がそう言う。 「この綺麗な肌に傷をつけようとしたどころか、襲おうとしたなど言語道断だ。……とりあえず、手足を切り落とすか」 「そうですね。それくらい、当然――」 「いやいや、やりすぎです!」  この二人に任せておいたら、とんでもないことになる。そう思って、俺はそう叫んだ。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!