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プロローグ
憂子は大学3年生。漫画やアニメが大好きな、のんびり屋な20代である。
秋の時期になると、憂子たち3年生は本格的なゼミナールに参加し発表や討論を行う。3年生の秋以降の忙しさは苛烈を極めた。
卒論研究を始めるのは4年生の春からでいいと思い、のんびりしていた。だが、その平和も夏休みまでだった。
月に一度、ゼミで憂子の発表の日がある。他人が聞けば、月に一度であればそれ以外はゆっくり過ごせそうなものだと思うことだろう。
ところが、だ。他のゼミ生の発表レジュメを前日に読み、感想やアドバイスを考えなければいけない。研究テーマが学生でそれぞれ異なるのに、どうして研究へのアドバイスなどができよう。
その上、憂子は大学の単位を卒業までに取り終えるために多くの授業を履修しなければいけない。本当は1、2年生で多く登録しておくべきだった。憂子ののんびり屋な性格が祟り、後々で時間割を詰め込む羽目になってしまった。
憂子のゼミは「西洋史ゼミ」だった。ヨーロッパの歴史や文化などを専門的に研究することのできるゼミで、大学ではそこそこの人気があった。同時に、研究作法などが厳しいことでも有名なゼミだった。
憂子は「狼男」を研究したいという願望があり、ヨーロッパ関係のゼミに入った。ところが、ゼミの指導教員がとにかく厳しいことが不運だったのかもしれない。
研究目的の書き方などで指摘を受けるたびに、憂子は「狼男」研究に対する熱情やゼミに入った理由を忘れた。ゼミ発表で他の学生たちが質問するのに対して、自分が責められているように感じてしまう。
憂子は卒論研究に嫌気がさしていた。「狼男」など、漫画やアニメと言った娯楽で楽しむだけでよかったのだ。それを西洋の歴史から民衆の信仰まで根掘り葉掘り調査しなければならない。
もうウンザリだと憂子は思った。せめて卒論を書かなくても卒業できるシステムがあればいいのに。
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