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その日は薄暗い雲から、ボタ雪が舞うように降っていた。
ワゴン車は、警察署の少し手前の、国道二四六号線の道路上で止まった。
紗香は車から降りる時、顔を輝かせて言った。
「俊ちゃん、先に警察署に行っているからな、後から亭主が来るって言って置くからな、ゆっくり来いよ」
「ああ解かった、紗香、傘を持って行け」
「傘なんか要らないよ」
俊也は、車から降りた。
降りしきる雪の歩道を駆けて行く、紗香の後姿が、美しく輝いて観えた。
薄黒い空から、走る紗香に降り注ぐ、白い雪。
俊也が手に掴んだ、雪の結晶は、優しく温かった… ……
― 完 ―
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