ふたりの、よいまちせかい

2/2
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
 その日は薄暗い雲から、ボタ雪が舞うように降っていた。  ワゴン車は、警察署の少し手前の、国道二四六(にーよんろく)号線の道路上で止まった。  紗香は車から降りる時、顔を輝かせて言った。 「俊ちゃん、先に警察署に行っているからな、後から亭主が来るって言って置くからな、ゆっくり来いよ」 「ああ解かった、紗香、傘を持って行け」 「傘なんか要らないよ」    俊也は、車から降りた。  降りしきる雪の歩道を駆けて行く、紗香の後姿が、美しく輝いて観えた。    薄黒い空から、走る紗香に降り注ぐ、白い雪。    俊也が手に掴んだ、雪の結晶は、優しく(あたた)かった… ……                          ― 完  ―
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!