ザ・わんわん会議!

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ザ・わんわん会議!

「それでは皆様!これより、第百五十三回、わんわん会議を始めたいと思います!」 「わーい」 「ぱちぱちー」  リビングに集まった犬は総勢五匹。  トイプードル(イエロー)の僕、議長のヨークシャテリア♂、パグ♀、サモエド♀、柴犬♂だ。  全員、この家に飼われているワンコである。ヨークシャテリア♂が八歳で一番年上なので議長を務めているのだった。  そう、家族がいない昼の時間に、こうして会議をするのが自分達の日課なのである。とはいえ、百五十三回も何を話し合ってきたのかといえば。 「今日話し合いたいことがある人、挙手してください!」 「はいはいはいはいはい!」  柴犬♂がジャンプして返事をする。 「もっとデカい犬になる方法を教えてくれ!柴犬って中型犬のはずだろ?小型犬の中に含めたらちょっとでかいはずだろ?なんで俺様は全然大きくならねえんだ?牛乳か?人間みたいに牛乳飲めばいいのか、おい!?」 「いや無理でしょ」  僕は思わず突っ込みをいれる。 「だって、君の両親も小さかったし。どう見ても遺伝的に君、チビだとしか……」 「納得いかねえ!なんでトイプードルのお前とそんなに背丈変わらねえんだよ、ざっけんな!!」 「近所迷惑!吠えないで!ここマンション!!」  マンションでこっそり五匹も飼ってるなんてバレたら大変なことになる。僕は柴犬に頭突きをかまして黙らせた。彼、黙っていたらものすごく美人な柴なのに。なんで喋るとこう残念なのだろうか? 「君はまだいいじゃないですか、ギリ柴犬のサイズなんですから!」  そんな柴犬に怒ったのは議長のヨークシャ♂だ。 「私なんて!私なんてね、小さすぎて何回うっかり飼い主に踏まれかけたことか!フローリングの床と同化してるとか言われても困るんですよ!!もっとでかくなりたいんですよ!!チワワよりずっと小さいってどうして!?」 「ヨークシャなんだから仕方ないじゃん……」 「小さいっていいことでしょ、文句言わないでよ!」  がう!と唸ったのはパグ♀だ。 「あたしなんか……あたしなんかね、病院で太りすぎだって言われたんだからね!オヤツ減らされることになったんだからね!今までだったら、ちょっとうるうるした目で見つめるだけで飼い主もいろいろくれたのに!あああああ痩せて小さくなりたい、なりたいなりたいなりたいっ!」  そう言って足を踏み鳴らす彼女はかなり立派な体格だ。お腹が地面につきそうになっているし、確実に太りすぎである。  そりゃ、あれだけ食いしん坊なんだからしょうがないだろ、と思う僕。 「理由はパグさんと違うけど、大きいのも苦労するってのは同意ですわ……」  はあ、とため息をついたのはサモエド♀だ。 「わたくしなんか、普通に床でお昼寝してるとすぐ皆さんがよってきて、わたくしの体を枕にするんですのよ?そりゃ、ちょっと他の犬より体は大きいですけれど、わたくしだってレディーなのに……人を枕にって……しくしくですわ」 「わ、わりい」 「あーごめん」 「すみませんでした」 「わ、悪かったわよ」  心当たりのある犬、全員が視線を逸らす。真っ白なモフ毛はあまりに魅力的なのだ。夏は暑そうで大変だなと思うけれど。 「じゃあ、決を採ります!犬の体が大きい方がいいか、小さい方がいいかを!」  そして、ヨークシャは背筋をピーンと伸ばして斜め上のことを言うのだ。 「こっちがいいと思った方でシッポを振って返事してください、よろしくお願いしまーす!」 「は、はい」  毎回思う。  僕は心の底から思う。  この会議には一体何の意味があるのかと。まあ。 ――案外人間の会議もこんなもんなのかもなあ。  会議は踊る。されど進まず。
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