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「私、秋也さんがらんぷやで働いてる姿を見るのが好きなんです。技術的なことは何もできないけど、それ以外のことで支えていきたいって思ってるんです」
勇ましいことを言ったところで、いつも臆病な自分に何ができるだろう。そうは思うけれど、秋也が一歩進むなら、奈江も一歩進まなきゃいけない。そうやって歩んでいける人と生きていきたいと誓ったのだから。
「俺さ、オーダーメイドランプの販売をやりたいんだ。今まで出会った仲間たちと試行錯誤はしてきた。これからもしながら生きていく。安定した生活なんてできないかもしれない」
申し訳なさと希望、両方をにじませた表情で、秋也は言う。
「転機って、四季と同じですよね? 人生にも四季があるんだと思います」
「そうかもしれないな」
「これから先、つらいことも悲しいこともいろいろあると思うんです」
秋也とは夏に出会い、秋をともに過ごし、冬をふたりで越えようとしている。
「冬が終われば、春が来ますね」
つらいことのあとには、必ず幸せがやってくると信じている。
「春も、奈江と過ごしたいな」
秋也はしみじみとつぶやく。
「これから先、何度となく繰り返す季節を、奈江と一緒に過ごしていきたいって思ってるよ」
「私も」
信じてる。一緒に過ごせるって。秋也となら、何度だって四季という名の幸せな未来が過ごせるって、信じている。
【第三話 完】
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