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リドルは駆ける
彼を初めて見た時、プリンス・クォールはこう思ったのだった。
「え、え?お父様、雪の妖精を連れて帰ってきちゃったの?」
それはふわふわの、真っ白な子犬。耳が垂れていて、黒い目もやや垂れ目で、シッポがふさふさしていて。
あまりにも可愛らしく美しく、雪と同じくらい白かったからだろう。それを聞いた王様とお后様は、途端に噴き出すことになる。
「クォール、この子は妖精ではないわ」
くすくす笑いながら、お后様は言ったのだった。まだ六歳の息子の頭を撫でて、子犬を息子に抱かせながら。
「この子はね、犬。テレビで見た犬とは違うと思うかもしれないけれど、犬というのはいろんな色や種類があるのよ。この子はとてもふわふわ、ふさふさの白い毛の犬種なの。公爵の家でたくさん子犬が生まれてね、あまりにも可愛らしかったものだから、うちにも一匹貰ってしまったのよ」
「ってことは、この子、うちで飼っていいの!?」
「もちろん。この子に、素敵な名前をつけてあげてね。貴方の弟よ」
「やったあ!」
まだ幼く、しかし可愛いものが大好きな王子が大喜びしたのは言うまでもない。名前を決めるのは簡単なことではなかった。何故なら、これから何年もずっと一緒に家族として暮らしていくのだ。少しでもかっこよくて、少しでも誇らしい名前がいい。
考えた末、クォールがつけたのはこんな名である。
「よし、お前の名前はリドルだ!絵本に出て来た英雄の名前なんだぞ、かっこいいだろ?」
「わんっ!」
思えば、幼い頃からリドルにはその片鱗があったのかもしれない。彼は明らかにクォールの言葉に反応して、返事をしてみせたのだから。
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