プロローグ

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 誠治とは社内恋愛だった。  三つ年上で、部署は違えど仕事で顔を合わせることも多かった。リーダーシップもあって企画を引っ張っていってくれる彼に、自然と惹かれた。  とある企画で同じチームになって、開かれた懇親会の帰り、二次会に向かうみんなを見送って駅に向かう途中で、くいっと腕を引かれた。恥ずかしそうに視線を少し外して、「送っていく」と言ってくれた。先輩後輩問わずいつも人に囲まれているひとだったから、まさかわたしを選んでくれるとは思わず、飛び跳ねるほど嬉しかったことを、よく覚えている。  それから大きな喧嘩をすることもなく二年付き合ったころ、誠治からプロポーズされた。わたしは25歳で、誠治は28歳。適齢期だったし、そろそろかなあと思っていたものの、実際に目の前で輝く婚約指輪をみたときには涙が溢れた。  それなのに。  あまりに突然、しかも呆気なく伝えられた別れの言葉は、思っていた以上にわたしの心を深く抉った。  だから、決めたのだ。  もう、結婚の約束はしない。  いや。もう、恋なんてしない。
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