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1.
秋風が吹き始めた頃の真夜中、白猫のマルは、エノコログサがぼうぼうに生えた庭に忍び込んだ。
(わあ。面白そうなところだぞ)
木製の塀に遮られて、外からはあまり見えなかったが、その庭はとても荒れていた。エノコログサを始めとする雑草が生い茂っているだけでなく、庭木の枝もかなり伸びている。
(よし、探索開始だ。わ~い!)
マルは、ワクワク気分で庭の中を歩き始めた。
(あ、なんかいるぞ)
雑草の根元に小さな虫がいた。おそらくコオロギだ。
マルは前足でちょんちょんとその虫をつついた。
ちょろりと、虫が逃げる。
マルは闘争本能を刺激されて、その虫に飛びかかった。
難なく捕まえることができたが、すぐに興味を失って放した。虫はこそこそ逃げていく。
マルには、この庭に来た明確な目的があった。
ネズミよりも大きなカエルが、ここにいると聞いたのだ。
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