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「待って」
と、人波の先頭にいた私の肩にポン…一度だけ触れたのは彼で…私は改めて
「転けそうになって…思わず…申し訳ありません」
進行方向にお尻を向けて頭を下げた。
「いや…大丈夫です。頭は上げて下さい」
「…怒って追い掛けて来たのでは……ない?」
「ないです。コレ」
彼はチラッと私に腕時計を見せると
「カズさんですよね?」
と私を見る。えぇえええぇ…っ…イワさんですか?っていう私のプラン①を超越したですよね?
「驚かせて申し訳ない。今から仕事ですか?」
コクコク…麗しい彼が私に喋っているという緊張で喉がカラカラだ。
「少し話をしたいんですが、仕事のあとでお時間頂けますか?」
……コクン…
「怪しまれてるよね、俺……っと…名刺を渡しておきます。会社に所在確認してもらってもいいから」
“アトリエ△△建築設計事務所
建築設備士 橋井和久人”
「あの…イワさんですか?」
「はい」
次の電車が来るアナウンスで聞き取りづらいが“はい”って言ったよね…次の電車か。もう行かなきゃ。
「行かないと…」
「仕事が終わったら、その携帯の方に電話もらえますか?何時でもいいから…お願いします」
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