case 1 玉木佳寿

11/20
1139人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「待って」 と、人波の先頭にいた私の肩にポン…一度だけ触れたのは彼で…私は改めて 「転けそうになって…思わず…申し訳ありません」 進行方向にお尻を向けて頭を下げた。 「いや…大丈夫です。頭は上げて下さい」 「…怒って追い掛けて来たのでは……ない?」 「ないです。コレ」 彼はチラッと私に腕時計を見せると 「カズさんですよね?」 と私を見る。えぇえええぇ…っ…イワさんですか?っていう私のプラン①を超越した 「驚かせて申し訳ない。今から仕事ですか?」 コクコク…麗しい彼が私に喋っているという緊張で喉がカラカラだ。 「少し話をしたいんですが、仕事のあとでお時間頂けますか?」 ……コクン… 「怪しまれてるよね、俺……っと…名刺を渡しておきます。会社に所在確認してもらってもいいから」 “アトリエ△△建築設計事務所  建築設備士 橋井和久人” 「あの…イワさんですか?」 「はい」 次の電車が来るアナウンスで聞き取りづらいが“はい”って言ったよね…次の電車か。もう行かなきゃ。 「行かないと…」 「仕事が終わったら、その携帯の方に電話もらえますか?何時でもいいから…お願いします」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!