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 藤井は松島の顏へと手を伸ばすために、前のめりになった。 そうして右の手のひらで触れた頬が、とても滑らかで温かいと感じた。  童顔だから、子供の肌の様にツルツルしているというわけでもないのだろう。 『ツルツル』からの連想で、藤井は自分の体が『ベタベタ』なことを思い出した。 自分の体がそうなら、そんな自分を抱いた松島の体も又、ベタベタなのは当然だ。  このまま寝るのは自分はもちろん、松島だって気持ちが悪いはずだ。 だけど、明日の朝食の準備のために一分一秒でも早く寝たい・・・・・・  自分の左頬に手のひらを当てたままで黙りこくっている藤井を、松島は窺う。 「藤井・・・・・・?」 「あ、悪い」  名前を呼ばれた藤井が反射的に引きかけた手を、松島は捉えた。 「別にいいけど――。どうしたのかと思ってさ」  言葉通りにこだわりのない明るい口調で言ってくる松島へと、藤井は思い切って告げた。 「松島、一緒にシャワー浴びないか?」 「は?」  松島に、藤井の声が聞こえないはずはない。 手首を掴んでいられるほどの至近距離にいるのだから、松島には藤井の声ははっきりと聞こえている。 ――それは間違いない。
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