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その後、レオに現実に無理やり戻された私と父は、モレーン先生宛に三日後ならば大丈夫です、と返信を出した。速攻でその日に伺いますと返信がきた。……何それコワイ。
「モレーン伯爵子息は、本気みたいだな」
「えっ、やめてよ、父」
「お父さんすら呼ばなくなったか……」
父のしみじみとした声に嫌だよ、と滲ませた声音をぶつければ父が悄気たが、そんなん知らん。モレーン先生だよ? 先生と生徒って関係の相手と結婚ってアリなの? いや、貴族は政略結婚なんて当たり前だから年齢差が激しいお相手もアリか? そういや、後妻として没落寸前の未婚令嬢が嫁ぐとかって話があるらしいもんね。
……いや、でも、政略結婚なんて今度こそ無いよね? だって、政略結婚だった相手に結婚式当日に駆け落ちされてるんだよ、私。
その私に再び政略結婚を持ち掛けようとはさすがに父もしないよね。持ち掛けてきたら速攻で家を出て行くけどさ。
「じゃあ断る方向でいいんだな?」
いや、なんでわざわざ確認取るのよ。
「もちろん断って下さい」
一も二もなく頷く。
「今度こそは、きちんと断るからな」
ああ、あの子爵に煮え湯を飲まされたの、何気に気にしてたんだ。
じゃあきちんと断ってくれるよね。
「じゃあ私同席しなくていいよね」
「いや。それはしとけ。下手にお前の意見が聞きたいから二人で話をさせて欲しいとか言われると厄介だ」
それは確かに。
そんなわけで私と父は三日後、襲来して来たモレーン先生と応接間にて対峙していた。
「周りくどい言い方は好みません。ミルヒ嬢、私と結婚を前提に先ずはお付き合いをしましょうか」
「嫌です。モレーン先生は一度だけ助けてもらったことは恩だと思ってます。でも恩返しする程のことでは無いと思ってますし、私は実家にて父の部下として働くつもりでいますから、結婚して家事をしながら夫の帰りを待つ妻にはなれません」
本当に直球だったので私も歯に衣着せぬ返事が出来た。
結婚に期待もしてなかったのに、無理やり結婚をするように強制してきて、新郎は駆け落ちするような情けない男だったのだから更に結婚への期待度は下がった。
これ以上結婚に対する期待度を下げることは無いだろうとは思うけれど、だからといって結婚したいか、と問われたらノーである。
ということで、結婚生活など送る気になれないのだ。
だから即座に断ったというのに、モレーン先生は聞く耳を持たない。
「まぁちょっと私の話を聞きましょう」
「いや、先生こそ私の話を聞いてよ」
「まぁまぁ」
まぁまぁじゃないんだよ!
私が口を開く前にモレーン先生が切り出した。
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