ネクタイのお礼は夜明けのコーヒー

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この間なんか、もう高校生のお子さんがいる女性社員と、同期だと間違われたくらいだ。 まだ私は、二十六歳だっていうのに。 社食でひとり、昼食を食べていたら、誰かが前に座った。 「お疲れ」 「……お疲れ様、です」 その人――夜城課長は手をあわせ、箸を取った。 「ねえ。 今晩、食事に行かない?」 大きな口を開けてごはんを入れながら、なんでもないように彼が訊いてくる。 「……え?」 箸でコロッケを切っていた手が止まる。 だって、課長がなにを言っているのか、私には理解できなかったから。 「ネクタイのお礼、したいし。 今晩、食事どう?」 また、課長が私に訊いてくる。 今度はまっすぐに、レンズの奥から私の目を見て。 「あ、あの。 私は別に、そんなつもりで渡したわけではないので……」 ずっと憧れていた夜城課長の誕生日を偶然に知り、なにかプレゼントを渡したかった。 本当にただ、それだけなのだ。 私ごときが課長とどうこう、なんてこれっぽっちも期待していない。 だって、期待するだけ無駄だから。 なのに、食事なんて。
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