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「あ……。
しまったな、これじゃパワハラのうえ、セクハラだよね」
少し赤い顔で、課長がボリボリと首の後ろを掻く。
「他意はないんだ。
ただ、これのお礼がしたいだけで」
ちょいちょい、とその長い指が、ネクタイをつついた。
「でも、月橋が嫌なら、無理にとは言わない。
それこそパワハラでセクハラだからね」
神妙に課長が頷く。
こういう真面目なところが、私の憧れだったりもする。
「じゃあ。
……はい」
「本当か!?」
課長が少し、こちらへと身を乗りだす。
「はい」
「よかった!」
ニカッ、と課長が笑い、口元から真っ白い八重歯が零れる。
それはとても眩しくて、つい目を細めてしまった。
洗面台の鏡に映る私は憧れの夜城課長から食事に誘われて、いつになく明るかった。
それを見て、みるみる気分は萎えていく。
「……勘違いしちゃ、ダメ」
これは、ただのお礼なのだ。
じゃなきゃ誰が、こんな冴えない女を誘ったりするだろう。
『うわっ、勘弁!
どうやったらそんな勘違い、できるんだよ!?』
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