第1話 帝都を出るアリエル

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第1話 帝都を出るアリエル

 上空に青い空が広がり、帝国の季節は秋。冷たい風が頬や身体に染み渡り、枯れ葉が地面にヒラヒラと舞い落ちる。この地面に広がる落ち葉は、まさに今の私を表しているかのよう。そして門番には、衛兵。まるで置物のように動じず、いま婚約破棄された私に掛ける言葉はない。迎え入れた時は敬意を示してくれたが、出ていく時は冷たいのは何処の世界も同じらしい。 ───宮殿の門を潜り、宮殿から伸びる鉄橋を私は進み、冷たい風で栗色のロングヘアーをユラユラと揺らし、馬車乗り場に向かう。帝国の秋は寒い方だ。宮殿の中では薄い繊維の白のオフィス仕様のシャツに下はスカート。脚にブーツ。しかし、寒いので革コートを着用する。鉄橋から城下町までの距離はざっと50メートル。地面は石造り、橋用の手すりや地面一辺にはハトの集まりが群れている。 そして近づけば飛び立ってしまう。  ★★★★★★  鉄橋を渡り終えた私、アリエル・ヨハーソンはメインストリート。リーベルト通りを歩いていた。レンガ造りのアンティーク調な建造物や街頭が並び、気品な雰囲気を漂わせている。  メインストリートを行き交い、私の横を通り過ぎる人々や馬車。身なりの良い人々、そうでもない人々。そして路地裏には宿無しや物乞いが座り込んでいる。まるで帝国の光と影を表している。 (ホント、帝国の議員はコレを見て何も思わないかしら?)  アリエルは周りを見て思う。しかし、帝国議会は平民派と貴族派と分かれており、帝国の伝統、文化、そして貴族の誇りの為に税金を費やす貴族派と国民の為に政策や改革を発案する平民派が日々、議論を白熱させている。けど、実際は貴族派が6割を占めており、平民派が議会で政策を発案しても権力と財力、地位に物を言わせる貴族派の前では無力であり、陰では貴族派に傭われた暗殺組織に(貴族派の政策の採決)(平民派の情報提供、そして平民派の政策の投票の辞退)など脅迫された平民派の議員も少なからずいる。  ★★★★★★  そして宮殿の窓からケビン・アルゼイドはワイングラスを片手に、愛人達を囲みながら宮殿から去り行くアリエルを眺める。 「フン、何で俺はあんな娘と婚約したのか………全くどうかしてたよ。あんな田舎娘は確か北のルシアン領だったな。貧相な娘は、貧相な故郷で余生を送るのがお似合いだな」  と、ケビンは高々と笑うのである。そして再び愛人達とイチャイチャを始める。    ★★★★★★ ────馬車乗り場にて。 「北のルシアン領。フェリの町までお願いいたします」  アリエルは馬車の運転手にお金を渡し、乗り込む。
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