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第83話 ヤバいウワサ話
───そして………かつて戦場だった広地を離れて1時間が経過した。馬車はコツコツと足音を響かせながら森林の街道を進み、フェリの町に向かう。
石造りに舗装された地面が一直線に広がり、森林の道際には街灯が並び、ポツポツと灯りが地面に広がる。
───一方、リアーナとフィリアは宰相家族を乗せた馬車の護衛と案内を兼ね、馬車の側を歩きながら会話する。
「何か、デビット宰相は最初、恐い感じでしたけど、話してみたら良い人ですね?」
フィリアは言う。するとリアーナは。
「帝都では、国民からは絶大な支持を得ているからね。市民に寄り添った政策をしてくれるから、人気があるらしいよ」
「でも………何でそんな凄い人が、フェリの町に来るんですか?」
「宰相として、平民派代表として帝国貴族と議会で対立しているから恐い感じになるのも無理ないよ。それに………これは噂だけど、この前、帝都の馬車乗り場で火災事故があって、乗っていた平民派の議員が亡くなったのは知っているな?」
「知ってますけど?」
「あれは、貴族派による謀略によるものらしい………その平民派の議員はヤバい情報を知って、貴族派を敵に回して殺害されたのよ」
リアーナは言った。
「そうなんですか?………めちゃくちゃ怖いじゃないですか」
リアーナの話に、フィリアはびくびくと震え上がる。
「それだけではなくて、この前、帝都で可決された福祉政策法っていう政策があるでしょ?」
「はい、35パーセントを増税して、病院や学校を国営にして、あとは低所得者には食糧支援をする政策ですよね。確か、平民派の議員が食糧を横領して何人か逮捕されたって………それってもしかして?」
リアーナの話に、途中で何かを察したかのようにハッとなるフィリア。
「ま、そういうことよ………。だから、デビット宰相がルシアン領に来る理由、分かるでしょ?」
「………確かに、このままでは家族に身の危険がありますよね。貴族って、何でも許されるものなんですか?」
フィリアの質問に、リアーナは言う。
「許されないわよ………けど相手は帝国を、昔から平民を支配し、皇帝陛下と共に歴史や伝統を築き上げてきた貴族よ。どんな謀略でも、地位と権力、財力で何でも揉み消してきたのよ」
と、リアーナは説明。
「だから平民派のデビット宰相が、昔からの伝統や歴史、地位を守って来た貴族にとって邪魔な存在なんですね?」
───これはあくまでも、とある冒険者による噂話、本当かウソか分からない。本当の話なら消されるだろう。
しばらく歩いていたら、フェリを町に辿り着く事が出来た。
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