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風邪を引いてよれよれのまま発情期に入り、本格的なそれがガッツリと一週間続いたものだから、途中で一旦点滴を受けるほど僕は弱ってしまった。
ニュイ・ドリームなんて絶対に利用したくないと拒否していたはずなのに、何も準備をできていなかった僕とリアンはかなりこの施設に助けられたのだ。
番のいないオメガ専用だから今回きりだけど……嫌なイメージを払拭できてよかった。
なんでオメガたちが日々運動しているのか、改めて痛感する。ほんと……大変だったなぁ。嬉しそうに僕の世話を焼いてくれたけど、リアンにもたくさん迷惑を掛けてしまった。
『オメガは体力勝負』なんて、最初は耳を疑ったけど……そのとおりすぎた。
もう給餌が癖になっているのか、リアンが僕の口元にスープを運んでくる。素直に口で受け取って、笑顔でリアンに美味しいと言うと、それを見たリアンも優しい微笑みを浮かべた。
こんな未来が待っているなんて、地球から転移してきた当初は想像もできなかった。
バース性が明らかになったとき、キリトと番になることを信じて疑わなかったし。異世界ってすごい!なんて未来がぶわっと広がった気持ちだったけど……まったく思ってたのと違う結果になった。
いろいろあった。辛いことも楽しいことも。
でも、過去の自分がいろいろと迷って失敗したことも含めて、そのお陰で一番の幸せを手に入れたことはわかる。きっと未来も明るいはずだ。
――僕のことを大好きな番、もうすぐ旦那さんになる人が隣にいるのだから。
「リアン、だいすき」
発情期中、何度も告げた言葉をまた重ねる。リアンが返す言葉もおなじだ。
薬指の指輪が楽しげに煌めいた。
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