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28.思ってたのと違う件。
久しぶりにクリアな頭で、ベッドに横たわったまま見慣れない部屋を見渡す。
僕のアパートくらいの広さの部屋には、大きなベッドと最低限の家具が鎮座している。しかし扉の先にあるバスルームは二人で入ることが前提のような広さがあって、何度もお世話になったことが薄っすらと記憶に残っている。
そのとき、チリンと音が鳴って扉横の小さな窓から台の上に、食事が置かれた。本当にここは、至れり尽くせりだ。
専用の袋に入れて出しておけば寝具や服も洗濯してもらえるし、必要な薬だって言わずとも用意してもらえた。さすがはオメガの発情期のための施設、というところか。
最後に利用できてよかった。
食事の匂いに釣られたのか、後ろでリアンがもぞもぞと動きだす。振り向こうと思ったのに、その前に項を舐められた。
「っひゃあ!」
「……おはよ、メグ」
んもう〜驚いた!想いを確かめあってからというもの、結構リアンはいたずらっ子だ。
涙目で振り返り恨めし気に睨みつけたけど、目を細めて愛おしそうに見つめてくるだけ。それだけで毒気が抜かれた。寝起きでこんなにもかっこいいの、反則!
下着だけを身につけた格好で、リアンが食事を取りに行く。窓からの日光に照らされている肢体は、均整に筋肉がついていて美しい。番の身体に惚れ惚れとしながら、そっと指先で自分の項に触れた。
まだカサブタになっているそれは、リアンの噛み跡だ。ここへ来た初日に僕たちは番になった。
あのときの身体が作り変えられる感覚、リアンとの結びつきがいっそう強固になった感覚は、とても言葉では言い表せない。
もう僕とリアンは一生離れられない。……なんて甘美な響きなんだろう。
「食べられそうか?帰る前にしっかり食べておかないと、また倒れそうで心配だ」
「もう大丈夫だって。ん〜美味しそうなご飯!」
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