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満点のチーズフォンデュを夫婦で堪能し、すっかり夜も更けた頃。
シンクでの後片づけを終えた怜が、足取り軽やかにダイニングへと戻ってきた。
「終わったよ」
「お疲れ。紅茶の準備できてるぞ」
「うん。ありが……あっ!!」
夫の向かいに座ろうとした怜の目に飛び込んできた光景。
それは、身の毛がよだつほどに恐ろしいものだった。
「ちょっ、十夜、何食べ……」
「んあ?」
今まさに十夜はタルトを頬張った。怜の目の前で呑み込んだ。
楽しみにしていたブラックベリータルト。甘いものが苦手な十夜には、ビターな抹茶タルトだったのに。
「ひどい!」
「いやいや、先言っとけ?」
「何年一緒にいるんだ!」
悪びれる様子のない夫。
その顔が綺麗すぎてかっこよすぎて、妻は余計に腹を立てた。
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