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「それは……見るだけでわかるの? その人の置かれている状況とか、心理とか?」
「そうですね。だいたいのことはわかります。だから今、和志さんが私になにかを頼みたいと思っているのも、わかります」
「……っえ!」
大袈裟にのけぞり、和志がアッと口を開ける。『愛美のこと、バレた?』と低い声音が空気に乗って伝わる。
「もしかして。妹さんが心配なんですか?」
「な、な、なんでわかるの??」
「……なんでと言われても」
陽彩は曖昧に笑い、首を傾げた。
「まさか、心が読めるとか、そんな突拍子もないこと言わないよね?」
「言いません。心なんて読めないので」
そう首を振りつつも、陽彩は対応に困惑した。普段は相手の心理状態を色と形で判断する程度なのだが。今、驚きと興奮に満ちた和志の、感情の振れ幅は大きく、彼の声が次々と聞こえてくるのだ。
『なに、この子。すげぇ』
『なにか超能力とかあるの? だとしたら愛美のこともわかる? 愛美に会わせたら、もしかしたら……』
『でもその場合、遼飛はどうなる?』
『かと言って今のまま、この状態が続くとも思えないし』
陽彩は和志の心情を聞き流し、手前に置いたコーヒーのカップに口をつけた。温かい息を吐き出す。
「ずいぶんお困りなんですね。妹さんと良倉さんのことで」
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