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放課後。
私は一応油揚を用意して、椎名くんと一緒にあの道を帰ってみた。
あの夢は神様からのお告げかもしれない。
もしもうまくお供えできれば大学合格も夢じゃない。
……と思ったけど、結局神社は見つからなかった。
そこには朝見かけた通りの空き地が広がっていた。
「受験は自分たちの力でやれってことかなあ」
「まあ、そう簡単に志望校に合格できるわけないよな」
私は半分がっかりして、半分ホッとした。
やっぱりあれはただの夢だったんだよね。
「残念。ここに来たらまた藤川がキツネに変身すると思ったんだけどなー」
「冗談じゃないよもう」
あんなファンタジー体験はこりごりだ。
私は油揚の入った紙袋をお社があった空間にそっと置いて、手を合わせた。
春には二人とも合格して、同じ大学に行けますようにと祈る。
気がつくと、椎名くんも隣に立っていて私と同じようにお祈りしていた。
椎名くんのカノジョで良かった。
夢の中でそう思ったことを思い出す。
……まあ、少しはいい体験だったかも。
暮れかけた空を見上げると、赤く色づいた雲がキツネの形に変化して、嬉しそうに飛び跳ねているように見えた。
なんだかちょっといいことが起こりそうな、そんな秋の匂いがした。
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