第1話 翔太

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

第1話 翔太

【高校3年】 「あいつ良いオンナだな、  翔太もそう思うだろ?」 「うん。」 僕は友人海斗の話に頷き苦笑いをしながら 相槌を打った。 海斗はオンナの話を得意げに興奮した様子で 延々に1人で話していた。  「翔太はなんであんな良い女と仲が良いんだよ。  翔太だけずるいや。いいよなあ、翔太は。」 「うん。・・・」 「カイ、俺達はなんでモテねーんだ?  カイも俺も見た目そんなに悪くねーのにな。  なぜショウばかりモテるのか、  何が違うんだ、何が。おいショウ、教えろよ。  そういえばショウの顔、やけに柔らかいな。  柔らかい顔がモテんのか??」 「おい、聡、やめろよ、翔太嫌がってるだろ。」 いきなり聡が僕の肩に腕を回して、 僕の顔をジロジロと見つめたかと思うと 僕の顔を触り始めたので僕は戸惑い 恥ずかしくなり下を向いた。 僕、聡に何を動揺しているのだろうか。 聡、それに僕はモテてなんかいないし、 勝手に決めつけないでほしい。 海斗も聡も僕なんかよりも男らしくかっこ良い。 海斗は陸上部で毎日部活で鍛えられた良い体を しているし、顔も少し色黒で彫りが深くて 凛々しい顔をしている。 聡は色白で痩せていてお調子者であるが、 顔は爽やかで優しい顔をしていて格好いい。 部活はバレーで頑張っているからか背が高い。 僕からみたら、僕や海斗よりも聡の方が モテると思うのに何故か勝手に自分はモテナイと 決めつけてしまう。 それに聡の見つめる眼力は絶対にモテ要素間違いない。 良いオンナか。 僕は病気だ、病気なんだ。 誰にも言えない、僕は誰にも言えない事がある。 僕には友人が何人かいる。 仲が良いと言えば、どうなのだろうか? 決して仲が悪い訳ではない。 友人は僕の事をどう思っているのだろうか、 そればかり考えてしまう。 いつからだろうか、1つの事が話せないばかりに 他の事まで何故だがあまり話せなくなってしまうのは。 話す事が苦しくなる事もある。 かといって、1人になるのは嫌なので あまり自分からは話せないけど 学校の休み時間などを一緒に過ごしたくて ほとんど寡黙でありながらも相槌を打っていた。 僕は周りの友人達が僕がこんな状況である事を どう思ってるのか非常に気になっていた。 でも決してそんな事は聞く事が出来ない。 大体僕は2つのグループにいる事が多かった。 1つは僕、海斗、聡の男三人のグループ。 もう1つのグループはクラスの男子から 一番人気がある澪、そして僕を含めて 四人のグループ。僕以外の三人は女子達。 僕のグループの女子達は下品な話が好きでなく、 僕の男の友人達を好意に思えないらしく 絶対他の男達を私達のグループに誘わないでと 念を入れられていた。澪は僕とは幼なじみ。 幼なじみでさえも僕の秘密は言えないでいる。 だから澪といる時でさえ本音が出せない。 僕の友人海斗は特に澪を気に入っていた。 澪が嫌がってる事は海斗は知らない。 僕のクラスの男子達は僕が澪達のグループにも 属していた事が羨ましいらしく たまに冷やかされたりしたが、 それも僕からしたら嫌でたまったもんじゃない。 ちっとも羨ましい事なんかじゃない。 それに女子から僕はモテてはいないし 例えモテたとしても、ちっとも嬉しいとも思わない。 澪はくるっとした大きな目をしていて 笑顔は誰よりも可愛いとは確かに思う。 でもただそれだけなのだ、僕にとっては。 クラスの女子達の殆どが澪の事を憧れていた。 僕は自分が自分でいられる場所が無かった。 僕は誰にも言えない秘密を抱えていた為に、 学校でいる時も家族といる時でさえ、 僕は孤独を感じる。無意識のうちに、 1人なんだと実感してしまう。 僕の秘密がもしも一般的だったとしたら きっと、友人達と心の底から楽しめて、 ワクワク出来るのにといつも夢みたいな事を 願っていたがそれは現実とは違っていた。 「ねえ、翔太聞いてるの?  私は、翔太にもっと話して貰いたいんだよ。  翔太は口数が少ないことを男らしいとか  カッコ良いとか思っているんだろうけど、  私はそうは思わないからね。  ねえ、真希ちゃんからも言ってよ。」 「えっワタシ?ワタシは澪と違って  寡黙の翔太君、それはそれで良いと思うよ。  ほら周りにいる男子達を見て。  澪も日頃から言ってるじゃない?  この世の男子達は口がうるさい下品だって。  翔太君はそんな男子達とは違うから、  皆、翔太君みたいなら良いのにと  話してるでしょ。ワタシも同感。  だから今の翔太君が良いの。  だってクラスの中で翔太君が一番紳士で  大人なんだから。」 「あのね、澪ちゃん、真希ちゃん、  凛は翔ちゃんのお友達は確かに  下品だと思うけどでも無邪気で悪気は  無いと思うの。それに顔も二人共  翔ちゃんに負けてなく悪くないよ。」 真希は成績優秀の優等生で更に澪の親友で、 澪にゆういつ本音で対等に 話をする事が出来るものだから、 クラスの女子の殆どから妬まれて嫌われている。 かといってクラスの男子、女子の殆どが 澪に距離を取っているようにも見えるので 何で女子達が真希を妬むのか僕には到底理解出来ない。 凛は天然で少し僕と似ている所もあるが 芯は強くてハッキリ言う所も持ち合わせて いる為、僕とはそこが違う。 確かに凛の言う通り、僕もそう思う。 海斗は無邪気でただただ澪を好きなだけで 恥ずかしさのあまりつい下品な言葉や態度を 周りにとってしまうのだろう。 聡はお調子者だから悪気はなく ムードメーカーでお茶らけて周りを 笑わしてくれる。 寡黙な事を男らしさやカッコ良さと澪は 僕の感情を勝手に決めてしまっているけれど、 全く違うからと心の中で否定してしまう。 ちゃんと話せたら一番良くてきっと 楽しいと思うのにと理解は出来るけれど、 それが僕には出来ない。誰にも話せないんだ。 僕には欠点があった。 あまり他人と話せない事により誤解を させてしまう事もしばしばあり、 相手を知らぬ間に傷つけてしまう。 小学最終学年になった頃、僕の事を 慕ってくれてるクラスメイトで友人の慶と 修学旅行を楽しみにしていた。 その頃の僕はまだ性に関する事が判っていなく まだ人を好きになる事も無かったので 無邪気になって友人とただ楽しむ事しか 考えてなかった。僕にとって慶とは 一番仲が良く、僕にとって、ただ一人親友と 呼べる奴だった。 だが、今はもう慶には会えない。 「翔太、もうすぐ修学旅行だな。翔太と一緒に  旅行に行けるだけでワクワクしちゃうぜ。  修学旅行は京都だって。  京都ってまだ行った事ないから  よく判らないや。  翔太は京都行きたいトコあるのか?」 僕達の小学校では修学旅行は小6の春と 毎年決まってる。 今年の修学旅行は5月のゴールデンウィーク後に 行われるのだが、6年になって一ヶ月しかない為 僕は慌ただしく感じてしまう。 慶とは小学3年生からずっと同じクラスで 慶は小柄で爽やかな優しそうな顔をしているが、 性格も穏やかで優しい奴で、 小3のクラス替えで慶と同じクラスになった日に 真っ先に慶から話しかけてきて、 僕は人見知りがてら慶に話しかけられて 嬉しくて恥ずかしさと嬉しさとで 僕の笑顔が少しひきつった顔をしたと自分でも 判るのだが慶はそんなのお構い無しに 慶の爽やかな笑顔が僕を元気づけてくれた。 僕にとって初めて出来た男友達それが慶だ。 「僕は京都は一度だけ親戚と行った事あるけど、  僕は京都駅から清水寺までの歩く道のり。  お土産屋さんがいっぱいあって、  そこが好きかな。」 「おい、翔太、道が好きなのかよ。  ただお菓子が好きなだけじゃねーか。  色気より食い気。判りやすいな翔太は。  翔太は誰か好きな奴とかいねえのかよ笑」 慶の質問で初めて気にした言葉【好きな奴】。 好きな人、恋愛、恋。言葉は聞いた事あるけど、 それが何なのかあまりよく判らなかった。 ただ僕は好きな人は慶だと心の中で答えた。 心の中で答えたが、言葉に出す事は恥ずかしくて 言えなかった。 今の言えない理由とは違う理由で、 ただ恥ずかしくて言えなかった。 恋愛という事がまだ判っていなかったから 何も知らなかったから何も悩みが無かったから 毎日があまりにも楽しくって、 ただ恥ずかしいという事だけで 慶ともっといっぱい遊ぶんだ。 ただそれだけで良かった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!