理想と現実

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結局、都古は伊吹に褒めてもらえたカシュクールビキニを購入し、 「あれ? ふーちゃんは買わないの?」 「うん、ビビッと来たのなかったし。それに私、水着は結構いっぱい持ってるのよね」 水着の試着をした都古を見た時の伊吹の反応を見たかっただけの風香は、結局何も購入せず。 「まぁ、僕は南先輩の水着は別にどうでもいいので、それでいいですけどね」 「アンタ、本当にミヤちゃん以外には塩対応すぎて感じ悪いわね」 「ミヤ一筋なので。うっかり優しくして、ちゃっかり惚れられても困りますし」 「優しかったら相当モテそうな顔してるだけに腹が立つわね、その言い草」 火花を散らすようなやり取りをする二人を、 「……」 購入したばかりの水着が入ったショップ袋を大事そうに胸に抱えた都古が交互に見やる。 「やっぱりイブくんって、普段からモテる……のよね?」 「うん……? 愛想が悪いってよく言われるから、そんなことはないよ?」 伊吹は一瞬だけ難しそうな顔をした後で、にこっと優しく微笑んで都古を見つめ、 「近付きがたいって言われてるだけで、実際はお近付きになりたがってる女子は山ほどいるでしょうに」 「……南先輩。そういうどうでもいい情報をミヤに吹き込むのやめてもらえませんか?」 唐突にスッと冷めた目つきになった伊吹が、風香をじろりと睨んだ。
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