アドルフside浅はかで可愛い人※ 【完】

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アドルフside浅はかで可愛い人※ 【完】

 どうにも我慢できなかった。休暇明けに血色も良くひときわ弾けるような笑顔を見せつけられては。  私は従者のロイに恋をしている。初めて私のところにロイが面接に来た時は、元々信頼できる知り合い筋からの口利きだったせいもあって断る気も無かった。けれども、屋敷の多岐にわたる仕事をそつ無くこなして、丁寧な振る舞いの中に時折見せる、何とも無邪気な笑顔に私の心臓は波打った。 けれども私より随分年下で、まだ世の中のあれこれも知らないロイに、同じ屋敷で寝食を共にするいい歳をした私が、まして主従関係の主人である私が付け込むわけにもいかなかった。  そんなロイが休暇明けになると酷く溌剌(はつらつ)としていることに気づくのに、そう時間は掛からなかった。日頃の疲れを、友人と会ったり遊びに行って発散してくるのだから、当たり前だと思いながらも誰と会っているのか気になった。 濃い金髪の巻き毛と美しい緑がかった淡いいベリドットの瞳は、きっと多くの人間を魅了するだろう。そして無邪気で善良なその性格。私は侯爵家のツテを使ってロイが普段会っている相手を調べさせた。 手元に届いた報告書には思いがけない事が書かれていた。ロイが三人の愛人と付き合っている?あのロイが?休暇の度に会っていたのは、王都でも羽振りの良い大店の後継の若い男や王宮の役人、そして若い騎士の一人だった。  もしロイの愛人の中に騎士が居なければ、私もロイに愛人にしてくれなどと言わなかったかもしれない。でもロイが騎士を愛人に選んでいたせいで、同じ騎士の私にもチャンスがあるのではないかと気持ちが止められなくなったのは確かだった。 だから、あの日湖まで足を伸ばしたのだと楽しげに私に話してくれた彼に、私にもチャンスが欲しいと切実に思ってしまったんだ。だからロイが私のゴブレットから酒を飲んだ瞬間、私たちは一種の契約を交わしたも同然だった。  けれど私は何も覚悟が無かった。ロイの恐ろしいまでの卑猥で美しい身体やベッドの上で乱れる様を、私だけで無く他の愛人も堪能していると言う事実は、私をすっかり苦しめた。 それもあって、私の人より大きくて、場合によっては嫌がられる猛々しい自分の持ち物を、まるで大事な宝物の様に崇めて楽しむロイを、どうしたら独り占め出来るか考え始めたのは早かった。 簡単に快楽を与えてはいけない。ロイにはギリギリまで粘って、忘れられない悦びを与えよう。私が唇を噛み締めながら興奮を逃して、息を整えて、ロイを追い詰めた甲斐はあった。ロイは私に愛人としての及第点をくれたのだから。  それから私はロイをゆっくりと攻略していった。ロイはクタクタになるまで身体を交えるのが好きだったから、それは私にとっても悦びで無理なことでは無かった。そういう意味では、私たちは相性が良かった。 ロイが甘えて来るのにも、幼い頃に懐かない猫をどうしたら撫でることができるのか研究した成果を生かした。その甲斐あって、私の腕の中ですやすや眠るロイが身体を重ねたその絶頂の瞬間に、愛の言葉を囁くのをどんな気持ちで聞いたのか今でもありありと思い出せる。  けれども目を覚ますと、まるでそんな事を覚えてない顔でロイは私に色っぽく微笑むばかりだった。やはり覚えていないのかも知れない。度々届くロイあての手紙を考え込みながら見つめる姿を眺めて、私は最後の仕上げをする事にした。ほとんど私の手の中に絡め取られたロイが、自分から私のものになって欲しかった。 恋人ごっこと称したこの作戦は兄上を巻き込んだものだったけれど、勘の良いロイは腕を組んで私を睨みつけていた。こうなっては、私がロイに真剣に気持ちをぶつけるしか残された道は無かった。愛を請うのは臆病になるが、失う事を思ったら大胆にならざるを得ない。  真っ赤な顔で声を震わせて強がるロイが可愛くて、私は思わず微笑んでいた。私の恋人はなんて軽はずみで浅はかなんだろう。そして私の様に重い男に捕まってしまった事を哀れに思った。  「…アドルフ、どうして僕を好きになったの?僕は愛人を三人も作る様な淫乱な男だよ。」 私の言葉を待って、緊張している可愛いロイを見つめながら、私は形の良い薄い唇を喰んで言った。 「私はロイに愛人が居る事を知って、愛を伝える勇気が出たんだ。ロイは若くて真っ直ぐだ。私の様な世慣れた男が手を出してはダメだと、最初はこの恋を諦めていたんだ。でも愛人達が居ると知って、私ならロイをもっと悦ばせてあげられると思った。そうしたら、私をいつか愛してくれるかもしれないだろう?」  するとロイは楽しげにクスクス笑って、潤んだ美しいペリドットの瞳で私を覗き込んだ。 「確かにアドルフの身体は、僕の好みにぴったりだったよ?その逞しい持ち物も含めてね?他の愛人なんて必要ないくらいに…。でも、言っとくけど僕はアドルフの身体だけが好きな訳じゃないよ。僕を見つめるその瞳は僕をドキドキさせるし、アドルフの事は立派な騎士だって尊敬してるんだ。アドルフの事は知れば知るほど好きになるよ…。」 嬉しい事を言ってくれるロイは、肝心な事を失念していると思った。自分でも怖いぐらいの愛に全く無防備である事に気づいていない。ロイに気づかれないくらい柔らかで、でも頑丈な(カセ)で一生私の側に縛りつけておくつもりなのに。逃げ出そうとしてももう手遅れだ。  私はロイのなめらかな胸を撫でて、首筋の甘い香りを嗅いだ。一時期匂っていた品の良い香りは、もう私の贈った別の石鹸の香りに差し替えられていた。その事に気をよくして私は指先に引っ掛かる、人より大きめな薔薇色の胸の可愛い尖りをぎゅっと引っ張った。 「んっ…!あぁっ、それ好き…。もっと…。」 素直に快楽を強請るロイは私の胸を震わせる。こんなに正直で可愛い男が私の手の中にいる幸福感に、私は舌を伸ばしてクルクルと滑らかな感触のそれを舐め回した。舐めたり突ついている間に唇に触れるロイの可愛いそれは石の様に硬くしこった。  ロイの興奮が美しい頬骨を紅潮させて、薄いのに弾く様な弾力の唇から漏れる甘い吐息は私を興奮させた。どんなに味わっても飽きることのないロイの味わいは、運命の相手だからなのだろうか。 すっかり硬く持ち上がったロイの可愛らしい昂りは私の腹を何度も突つくので、私は重量のある自分のそれを重ねてゆっくりと腰を揺らした。眉間に皺を寄せて、苦しげに快感を堪えるロイは、まるで神殿の肖像画の様に美しい。金色の巻き毛がベッドに広がって、神々しいくらいだ。  甘い口の中を優しくなぞると、甘える様に舌を絡ませてくるのが嬉しい。私の身体に強請る様に長い脚を絡めてくると、そろそろロイのあそこが可愛くひくつく頃合いだろう。 ロイに見せつける様に赤らんだ窄みを舌で可愛がると、鼻に抜ける様な甘い声を出す。その仔猫の様な呻き声は私をますます没頭させる。舌先をぎゅっと時々締め付けるのも股間をズキズキさせるんだ。 愛人が多くて人一倍経験も豊富なロイだけど、不思議くらい後ろの窄みもゆるむ訳でもなくて、返ってキツいくらいだ。私はロイの中の感触を思い出して、もう待っていられなかった。  「ロイ、もう我慢できない…!挿れて良いかい?」 私がそう言うと、ぐったりとした色めかしいロイは私の唇の中へ囁いた。 「…きて。僕も待てない。」 当てがうと吸い付く様なその卑猥で美しい場所は、私の猛り切ったそれをズブズブと呑み込む。香油だけでないロイからのぬるりとしたそれは、身体を重ねる度に増すようだった。 「あぁっ!…アドルフっ、来てぇ…。」 グリグリとロイの敏感なそこを押し込んで、何度も私の出っ張りで撫でるとロイがぶるぶると震えた。ダラダラとロイの高まった先端から粘液が出てお腹に流れると、私はそれを指で掬って可愛いロイの昂りを撫で回した。 途端にうねって締め付けるロイの中で、私はウッと息を詰めて甘い快感に溜息をついた。何度繰り返しても飽きる事のないこの交歓は私を益々いきり勃たせて、私をしゃぶり尽くそうとするロイの貪欲さに笑みさえ浮かべる始末だった。  「愛してる、アドルフ…!」 快感でダメになっているロイが切れ切れに溢す心の内は、私をうっそりと微笑ませる。この可愛い生き物を、私は決して離さずに生涯可愛がっていくだろう。 私はロイに一方的に急き立てられながら、腰の動きを止める事が出来ない。まるで二人とも明日など無いかのように、切羽詰まった様に欲望を、お互いを貪った。  「ロイっ!逝くぞ!」 大きく呻きながら、私は四つん這いになったロイの後ろから何度か打ち込んだ腰を引き摺り出した。そして入り口近くでビュクビュクと、終わりのない吐き出しを続けた。放心状態で、ゆっくりと自身を片手を支えに抜き出せば、白濁が真っ白い太腿に赤らんだ窄みからドロリと垂れる。 いつ見てもその光景は私をゾクゾクさせた。ロイを手に入れた者しか許されないその征服欲、独占欲が満たされるのを感じた。すっかり気を飛ばしたロイを綺麗にしてやりながら、私は巻き毛を掻き分けてうなじに唇を押し当てた。  「…ん。あどるふ…?」 少しぼんやりとしたロイを抱き寄せて、私は耳元で囁く。 「もう少し眠っておいで。まだ晩餐までは時間があるから。愛してる、ロイ。」 すると向きを変えて私の胸に顔を寄せながら、ロイは目を閉じたまま口元を緩めて言った。 「…ぼくも。あいしてる。…。」 すっかり寝落ちしてしまったロイの寝顔にもう一度唇を押し当てると、私もまた満たされた気持ちで目を閉じた。                    完             ★連載中のBL『竜の国の人間様』がほのぼのしていて、なかなかBのL的展開にならないそのもどかしさをこの作品で昇華させました笑 ビッチなのに可愛い主人公と裏腹黒いご主人様が書いてて楽しかったです💕 この作品が、皆様の日々の息抜きになれば良いなと願っております☺️ 読んでいただきありがとうございました♪ なお中編恋愛ファンタジー『貧乏令嬢の私、冷酷侯爵の虫除けに任命されました!』も連載開始しました❤️ 傲慢な男と健気で前向きなヒロインとの、お互いの隠された心の傷を癒しながらの関係性の変化をじっくり描いています!ヒストリカル王道ラブロマンスがお好きな方にオススメです😊溺愛イチャイチャもたっぷり🥰 よろしくお願いします!
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