元に戻るために

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その時、ブブブとスマホのバイブ音がして松田がブレザーのポケットからスマホを取り出した。 画面を確認し、こっちにも見えるように画面を向けた。 『 ママ 』 着信を示す画面に浮かんだ文字に、萌香がハッとしたように言った。 「今何時?」 俺は自分のスマホを確認した。 「…8時だ。」 いつの間にかそんなに時間が経っていたんだ。 「どうしよう。きっと萌香の帰りが遅いから心配してるんだと思う。」 萌香が慌てた様子で言った。 「おい、どうすんだこれ」 松田は萌香のスマホを突き出して言った。 「松田先生、とりあえず出てください!うちのママすごく心配性なんです。萌香は今この声だから出られないし…」 「ええー、えっと…」 松田はスマホの操作に戸惑いながらスピーカー設定にして電話に出た。 「も、もしもし?」 『萌香ちゃん?今どこにいるの?』 スマホのスピーカーから萌香のお母さんの声が聞こえた。 「あー、えっと、学校?」 『えぇ?まだ学校にいるの?何してるの、こんな遅い時間まで』 「あー、あのーえぇーっと」 慌てる松田は俺達の方を見た。 「「勉強!テスト勉強!」」 俺と萌香は小さい声で松田に言った。 「あぁ、そうだ!勉強。勉強してたんだ!」 松田が辿々しく言った。 『あら、そうなの…』 「そーそー!来週テストだからな!」 『…萌香ちゃん?なんか喋り方変じゃない?』 やばい!! 俺達は顔を見合わせた。 母親ってなんでこう勘が鋭いんだろう。
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