ありがちな、ただの恋

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 カラオケルームへ戻り、口を開けて眠っている響花を起こす。そして親友の彼女と僕と三人で先に帰ると告げた。仲間たちは少し変な顔をしたけれど構うものか。  響花はふらついて一人で立てない。かなり酔いが回っているようだ。親友から、僕が響花を家まで送ってくれることをおとなしく聞いていた。  カラオケボックスを後にし、駅まで響花を支えながら三人で歩く。 「わたし、酔っ払っちゃて。ごめんね迷惑かけて」  ろれつの回らない声で謝ってくる。少しは酔いが覚めてきたようだ。 「いいのよ。彼がちゃんと送ってくれるからね」 「ありがとうー。なんか楽しいね」 「はいはい。しっかり歩いて!寝ちゃダメよ」 「うん。頑張る」  響花が僕を見た。真剣な目をしている。そして「わたしね。振られちゃった」と、大したことじゃないような軽い口調で言った。  響花の肩を支える腕に彼女の体温が伝わってくる。響花ってこんなに軽かったんだと僕は思った。 「わたし、振られちゃったの」  彼女がまた言った。僕は「ひどい男だね」と答える。すると響花の足が止まった。ポツッと、 「男ってひどいよね」  つぶやくように。まるでひとりごとのように。 「すべての男がひどいわけじゃないよ」と僕。そしてまた歩き出す。響花はしばらく黙っていた。しかし、 「きみは違うの?」 「僕は違う」
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