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あの夜のこと
「これ、起きないね」
「どーする? 誰か家知ってる?」
「聖梨〜起きろ〜」
二次会の場所へ行こうと、店を出る支度をみんながし始めた頃。向こうからそんな会話が聞こえて目をやった。
見れば、見事に聖梨が酔い潰れていて。そんな酔っ払いをどうしようか、作戦会議がなされているところだった。
「槇村、お酒弱いの?」
「普通だと思う」
「さすが。大学もサークルも同じだけあるね」
「……うざ」
今さっき来た篠原は、まだ酒は1滴も飲んでいない。俺の言葉は無視して「二次会行く?」と聞いてきたけれど、聖梨が気になって仕方ない。
すると「タクシー呼ぶから乗せよう」と、佐野が聖梨の元へ。高校時代から誰にでも世話をやくようなやつだ。聖梨のことを立ち上がらせようとしている。
だけどそれを見た瞬間に、俺の体は自然と動いていた。
「どいて」
「お、おう」
声をかければ、佐野が聖梨に触れる前に退く。それから「あとはよろしく」と、二次会に行く組をまとめるために店を出ていった。
聖梨の隣にしゃがんで、肩を揺らしてみる。だけどぐーすか寝ていて、全然起きない。こんなところで寝て、無防備な寝顔を晒して、くそむかつく。
「おい」
「……」
「聖梨」
「……ん、」
名前を呼んでみれば、ようやく反応があった。もう1度呼びかけると、「……も、ねむい、」とふざけたことを口にする。
「ふざけんなおい、立て」
「、むり……」
「はぁ」
外ではみんなが待っているから、早くこいつを連れて出なければ。もう、おぶっていくしかないのかもしれない。
篠原と目が合ったけれど、そちらは無視をして。聖梨と同じテーブルだった女子たちに手伝ってもらい、なんとか聖梨を背中に乗せることができた。
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