狂った祝祭

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 「土を掘り返して、実ってる物は新しい畑に植え替えましょう。遺骨は俺が回収しますから安心して下さいね」  村が少しずつ、あずまさんの思い通りの形に変わっていく。ヘドロで汚れた池は嘗ての景色を取り戻したように美しくなり、民家の周りの安全も確保され、新しく生まれ変わった。  「遺体や遺骨もこんなに出ました。食品というものは、こうして死んだ生き物の血肉で作られるんです。だからこそ食品には安全性が欠かせないんですね。都会の人にもわかって欲しいものですよ」  昨今では、洋菓子に毒を盛る行為や大麻を入れる事件が話題にあがっているいっぽうで、飲食店のメニューや食器を舐めたりいたずらしたりする事例もある。そんな彼らにも、あずまさんの言うことを聞かせてやりたいものだ。  「そういえば、鉢の巣を駆除した時に、誰もいないお宅ありましたが、誰かいらっしゃるんですか?」  「いえ、色々あって一家心中した家族が住んでたんですが、怖いので誰も住もうとしないんですけど」  「そうですか、じゃあ、取り壊しましょう」  「ヘ?」あずまさんはさらりと口にするが、大丈夫なのか? そんな訳あり物件を取り壊すって祟られないんだろうか。
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