第二章 楽しいワルイコト

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まだ眠そうに彼が、手探りで置いてあった腕時計を手に取る。 「七時だな」 よく見えないのか時計に顔面をくっつけるようにして彼は時間を確認した。 「七時!?」 マズい、もうとっくに朝だ。 のんきに気持ちよく、ぐーぐー寝ていたのを後悔した。 しかしそんな時間だというのに、こんなに静かなのは不思議だが。 「帰ります!」 「待て」 緊急事態なので恥ずかしいなんて考えないでベッドから飛び降りようとしたが、コマキさんから腕を掴んで止められた。 「止めないでください! 早くしないとコマキさん、殺されちゃうかも!」 0時を超えるとブレスレットのGPSが作動し、警備会社に私の居場所を教える。 あれにはそういう役割があるのだ。 だから日付が変わる前に帰りたかったのに、ぐっすり眠ってしまっていた自分が恨めしい。 とにかく、そんなわけでもう父に私の居場所は知られている。 なのにこんな時間になっても踏み込んできていないのは、不気味としかいいようがない。 「殺される、か」 自分の命の危機なのに、コマキさんはおかしそうに笑っている。
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