父上と祖父上と猫

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 ソマリの言葉に、スクーカムとキムリックの親子が前のめりになって尋ねてきた。ボンベイのことを心から案じているのだろう。  ソマリは頷くと、こう続けた。 「ええ。その方の知り合いに、たまたま東の方の医学に詳しい医師がおりまして。『埃臭い部屋を掃除した時や、野山で草木から出る花粉を大量に吸い込んだ時の症状に似ている。漢方という薬を飲むと症状が収まる場合がある』とのことで、その漢方とやらを取り寄せてしばらくの間服薬したのです。するとその後は、それまでよりも格段に症状が良くなったのですわ。まあ、完全に治ったわけではなかったのですが、猫ちゃんと触れ合うとたまに鼻がむず痒くなる……くらいの軽症に収まった覚えがあります」 「おお! つまり猫の呪いによって父上が苦しんでいるのではなく、病の一種ということだな?」  キムリックが明るい面持ちになり、念を押すように尋ねてくる。 「そうではないかと思いますわ。薬で病気はよくなりますが、呪いは解けませんもの」 「素晴らしい! くっしゅん。それなら早速その漢方とかいう薬を取り寄せさせようっ。 くっしゅん! キムリック、手配を頼むぞ!」 「承知いたしました」  対処法が見つかったことに、ボンベイもキムリックも瞳を輝かせている。  一方、スクーカムは感慨深そうな面持ちでソマリを見つめていた。 「君は本当に猫のことなら何でも知っているのだな……。どこでその情報を仕入れているのか、不思議に感じることがある。王宮お抱えの研究者だって知らないような知識があるのではないか?」
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