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最終話-1
翌日。
クリスタルリップスで、ソフィアとアネットの勝負が始まろうとしていた。世間には「ナンバーワンキャバ嬢のアネットに挑む、期待の新人ソフィア」という大会形式になっているのだが、突如開催される対決にキャバクラ界隈では騒然となっていた。
「もー! 昨日、ソフィアさんが無断欠勤したのは、この準備のためだったんですか!?」
「え、えぇ……」
状況を知らないくるみは「こんなにも楽しいことを教えてくれなかったなんて!」と拗ねねがら文句を言っている。
「でものぶおさんには連絡しないとダメだからね? 同伴が入っていたんでしょう?」
「申し訳ございませんわ……」
姉御肌の綾乃はソフィアに優しく注意をした。
「ソフィア。俺は何がなんだかサッパリだ!!」
「すみません。リュクスラブ側が秘密裏に準備をしていたようで……」
今まで散々ソフィアに振り回されてきたが、今回ばかりは松田もお手上げだ。松田が出勤した時に、すでにクリスタルリップスは会場仕様になっていたからだ。店内をソフィア側とアネット側の二つに分け、それぞれの売上で勝負をする。ちなみに会場がクリスタルリップスになったのは、「ソフィアにハンデをあげなくてはね」とアネットの独断だった。
「秘密裏って言っても、どうやって店に入ったんだ……。雅也さんか?」
『泥棒はここにいますよ~』
「……」
クリスタルリップスを開けたのはソフィアだ。魔法で開けたのは言うまでもない。
「くるみさん、綾乃さん。今日はよろしくお願いいたします」
『よろしくお願いします!』
ソフィアとすずは丁重に頭を下げた。
今日の客はソフィアの指名客のみ。ソフィアは卓を行き来し、接客をしていくのだが、一人では大変なことから、ソフィアと一緒に卓を回る要因として二人にお願いしたのだ。
ちなみに、ソフィアたちが他の卓で接客している間は、他のキャバ嬢が間を繋ぐ。
「はぁ……。大丈夫かな。リュクスラブのオーナーから何も聞いてないし、雅也さんも俺に何も言わないし。というか、雅也さんはどこだ!?」
「こんな時なのに、雅也さんと麻妃さんはどこにいるんですかね~」
「そうね……」
事を大きくさせないために、麻妃と雅也についてはまだ黙っておくことにした。二人はアネットの手下による監視の下、倉庫に拘束されたままだ。
『二人、無事だといいけれど』
「えぇ……」
開店前十分前。クリスタルリップスの扉が開いた。華やかなドレスを纏ったアネットに、相変わらず露出の高いドレスを着たキャバ嬢たちが登場した。
「ごきげんよう、みなさん」
『しょぼい店ね~』
クリスタルリップスとリュクスラブはお互いに睨みを利かし、火の粉を散らしていた。
「ソフィア、最後の晩餐を楽しんでね?」
ふふっと余裕の笑みをソフィアに向け、アネットは持ち場に着いた。
「くー! 超ムカつくっすね!!」
「えぇ。本当に胸くそ悪いわ」
「まぁまぁ、みなさん。勝負といえど、いつも通りにいきましょう。お客様に楽しんでもらうのが一番ですから」
ソフィアもアネットのように余裕の表情を見せるが、内心は不安で押しつぶされそうになっていた。雅也と麻妃の命が懸かっている。
──絶対に負けない!
オープンと同時に、ソフィアとアネット両者に客が訪れた。
「ソフィア!」
満面の笑みで近づいてきたのは、のぶおだった。
「のぶおさん。昨日はごめんなさい」
「いいんだよ。いつもソフィアにはお世話になっているからね。にしても、対決だなんて驚いたな」
「えぇ、色々とございまして……」
「相手がアネットとなれば、ソフィアには絶対に勝ってほしいからね。まずは、これをお願いしよう」
のぶおもアネットの嫌がらせに遭った身として、なんとしてでもソフィアに勝って屈辱を晴らしてもらいたかった。今日ののぶおは羽振りがよく、一本目から高級なワインを入れていく。
「こ、こんな高級なワイン、よろしいのですか!?」
「あぁ、もちろんだ」
「さすが、のぶおっち~!」
ソフィアは、先手を取った。アネットは接客していて、まだ気づいていない様子。晴子は独断でソフィアのテーブルをめがけて魔法をかけ、攻撃しようとするが、すずがこれを防御した。
『ソフィアの邪魔はさせない!』
『すずのくせに生意気』
晴子が魔法を発動させたことで、アネットはソフィア卓の状況を把握した。まだ始まったばかりといえど、一度でもソフィアに負けることは許せなかった。
「このボトルじゃ足りないよ~! 私がソフィアに負けてもいいの?」
「しょ、しょうがないなぁ」
アネットの客は高級ワインボトルを二つ追加した。どうやら魔法で操作されてはいないらしい。晴子時代からの数少ない客なのだろう。
『魔法じゃないみたいね』
「えぇ、全てが魔法とは限りませんからね」
魔法のかかっていない客に手を出してしまえば、それこそアネットと同じになってしまう。ソフィアは魔法で攻撃を仕掛けることはしなかった。
アネットは、男にボトルを入れさせたと思いきや、一口だけ飲んで、新規客のところに移動した。滞在時間は五分にも満たない。アネットを取り戻したければ、ボトルを入れろということなのだろう。
『今入ってきたお客さん、魔法にかけられているね』
すずがソフィアに耳打ちをした。すずの魔法ではアネットには勝てない。
「それならば」
ソフィアは指をパチンと鳴らし、アネットの魔法を解いた。
「……あれ? どうしてキャバクラにいるんだ?」
男は退店しようと席を立った。リュクスラブではできなかったが、今のソフィアにはアネットと互角で戦えるほどの力を得ている。アネットは少し驚いた様子を見せ、ソフィアを睨んだ。
「ソフィアのくせに……」
アネットはソフィアの魔法を解き、再び男に魔法をかける。男はくるっと踵を返しストンとアネットの横に座った。流れるようにアネットにボトルを入れようとする。
「そうはさせないわ」
負けじとソフィアも魔法を返し、男の魔法を解いていく。ソフィアとアネットの攻防戦が始まり、男は踊らされている。男は自分の意思が働いていないことに狼狽えていたが、周りから見ればただの不審者だ。松田は彼を危険人物だと判断。
「すみません。何度も出入りされては困りますので」
ボーイに連れられ、男は外へ。クリスタルリップスへの出禁を喰らってしまった。
──ごめんなさい……
罪のない人を巻き込んでしまったことにソフィアは心を痛めたが、多額の支払いを強いられるよりもマシであろう。
その後もアネットと晴子の魔法に警戒しつつ、ソフィアは接客を続けていた。楽しい時間を過ごしてはいるのだが、やはりアネットには到底及ばない。
「ソフィアさん。アネットのやつ、シャンパンタワーを作らせたみたいですよ」
ボーイがアネットの方へシャンパンタワーを運んでいる。どうやら新規客が訪れていたらしい。アネット側の客が多く、ソフィアも全ての魔法を防ぐことは厳しかった。
「……楽しそうで何よりだわ」
『ソフィア、大丈夫?』
すずが心配そうにソフィアを見ている。ソフィアは小さく頷いたが、手に汗を握っていた。
──正直、お客様を呼べないのは痛手ですわね
ソフィアはスマホで客にメッセージを送ることがほとんどなく、文通でやりとりしているが今回はそれが仇となった。のぶおのように同伴をしたことのある客は、待ち合わせ手段のためにメッセージアプリのIDを交換しているのだが、やはり数少ない。
「あぁ、ダメだ。今日は来れる人が少なそう」
くるみはスマホを開いてメッセージを確認していた。くるみも自分の客にメッセージを送り、声をかけたのだが、急なことから都合がつかない人も多かった。それに、いくらお気に入りのキャバ嬢のお願いとはいえ、他のキャバ嬢にボトルを入れるなど乗り気でない人もいるだろう。
「アネットのお客様は、あれで納得してるのかな」
綾乃がアネットの卓を見ながら呟いた。アネットは客を素早くローテーションしている。一度ボトルを入れた客が、二本目を入れる意思がなければすぐ帰していた。
「あら、クリスタルリップスさん。お暇そうね? 私のヘルプにつきますか?」
アネットがわざわざこちらに出向き、それだけを言いにきた。ふふっと嘲笑するアネットの背後に、一人の女性が現われた。
「心配ご無用! 今から姐さんは私たちと飲むんだから!」
「なつみさん!」
トレーニング終わりであろうなつみが、マッチョたちを引き連れて登場した。アネットは舌打ちをして持ち場に戻る。
「あら、鈴木さんも来てくださったのね」
リュクスラブの帰りに出会った男性、鈴木と友人たち。どうやら入口でなつみたちと意気投合したらしく、仲良く入店した。ソフィアの元に十名ほどの客が一気に集まった。
「も~、勝負だなんてビックリしたよ」
「なつみ、雑談はいいから。さっさとボトル入れなさいよ」
高圧的な態度でなつみにボトルを強要するこの時のくるみは、アネットよりもタチが悪いかもしれない。
「あんたに言われなくても、入れるっての。コレくださーい!」
なつみはメニュー表に書かれた高級ボトルを指さした。
「えっ」
「我らの姐さんには勝ってほしいでしょ?」
「なつみ……あんた意外にいいやつじゃない」
くるみとなつみは固い握手を交わし、妹分同士、結束を強めた。
「マッチョさんたちは、プロテインでよろしいですか?」
プロテインなど売上にさほど影響しないが、ソフィアはマッチョの筋肉に配慮した。自身の売上のために、鍛え上げてきた筋肉を溶かしてほしくはない。
「いや、今日はチートデイなんだ。筋肉のために暴飲暴食するぞ!」
マッチョは白い歯を輝かせ、グッドポーズをソフィアに向けた。酒や唐揚げなどを大量に注文し、暴飲暴食を始める。
「俺も頼んでいいかな」
「もちろんです。鈴木さんは何になさいますか?」
「シャンパンタワー」
「えっ……」
『え~~~!?』
「いや、これは俺だけじゃない。実は入店前に、みんなで話していたんだ」
鈴木だけでなく、鈴木の友人となつみ、マッチョたちがソフィアにシャンパンタワーをプレゼントしたいという。皆がソフィアに向かって笑顔を向けた。
「みなさん……ありがとうございます……」
『嬉しいね』
ソフィアのこれまでの努力は結果となって現われている。アネットの売上に追いつき始め、逆転もありえるかもしれない。会場はより一層盛り上がり、それぞれの推しキャバ嬢を勝たそうと客の羽振りもさらに良くなる。
──にしても、アネットの魔法が落ち着いていますわね
アネットが魔法攻撃を仕掛けてこなくなった。晴子も監視しているだけで、特に何もしてこない。アネットが接客に忙しく、こちらに手が回らないのか。それとも勝っているために魔法を使う必要がなくなり、魔力を温存しているのか。魔法で勝負してこないあたりは、ソフィアにとって好都合だが、どうも雲行きが怪しくも思える。
一方、アネット卓では。
「勝ったも同然ですね」
アネットの取り巻き、愛梨がソフィア卓を眺めながらアネットに話しかけた。
「えぇ。でもそれだけで終わらすつもりはないのよ?」
「……えっ?」
愛梨もアネットの企みは知らなかった。悪魔のように笑うアネットに、愛梨は戦慄が走った。
***
「ご新規四名様です」
ボーイに案内されやってきたのは、新規客。ソフィアとアネットの対決を聞きつけ、興味本位でやってきたらしい。
「いつもSNSで見ています! キャバクラも初めて来ました!」
「ありがとうございます。お名前をお伺いしてもよろしいかしら?」
黒縁眼鏡をかけ、七三に分けられた前髪はいかにも真面目そうな雰囲気を漂わせていた。
「僕、村上です。僕がソフィアさんに興味があったんですが、一人じゃ怖くて……友人三人に頼んで一緒に来てもらったんです」
「まぁ、嬉しいですわ」
ソフィアは丁寧に相手のペースに合わせて、細やかな配慮で接客していく。終了時刻も迫り来る中、本当はそんな余裕はないだろうが、勇気を出して来てくれた客を無下には扱わない。
『残り三十分だね……』
──まだかしら
ソフィアはある人物の到着を待っていた。その人物が訪れれば、明るい未来に一歩近づくのだが、訪れなかった場合はアネットの条件を受け入れるだけでなく、ソフィアは大事な人をさらに失う結末になる。
──今は信じて待つことしかできないわね
ソフィアは笑顔を取り繕いながら談笑していると、村上の友人の一人が手からグラスを滑らせた。テーブルの上にガシャンとグラスが落ち、ウイスキーが溢れる。
「うっ……」
男の顔は青ざめ、腹を抱えて背中を丸くした。
「大丈夫ですか?」
ソフィアが男の背中にそっと手を触れると、シャツは冷や汗でびっしょりと濡れていた。
「どうしたんですの!?」
男はその場に倒れ、腹痛に耐えて唸っている。それに釣られるかのように、隣の男二名も腹を抱え倒れてしまった。
「お、おい! どうしたんだ!?」
四人のうち唯一無事である村上はパニックを起こし、大声で友人に呼びかけている。村上の声に辺りはざわつき始める。
──何が起ったの!? アネットの魔法はかからないようにしていたのに……
ソフィアとすず、男性客に触れ治癒をする。
『……アネットの魔力が感じられない!?』
「えぇ……」
アネットによる嫌がらせだろうと思っていたが、三人からアネットの魔法は感じられなかった。魔法でないのならば回復は早いだろう。ソフィアとすずは魔力を与え続けたが、アネットとの攻防戦で魔力を消耗していたようだ。思っていたよりも回復が遅い。
『ソフィア、一応救急車を呼んだ方がいいかも』
「えぇ。くるみさん、急いで救急車をお呼びになって」
「わ、分かりました!」
くるみは救急車に電話をかけようとスマホを探す。
「どこいったの!?」
先程まで手元にあったスマホが消えていた。ソファの隙間に入り込んだのか、床に落ちたのか、くるみが探すも見つからない。
「くるみ、何してるの! 私がかけるわ」
綾乃がスマホを取り出し119番にかけるも、コールすらならずに遮断されてしまった。
「えっ!?」
アネットはクスクスと笑いながら指をパチン、パチンと鳴らし続けている。くるみのスマホを隠したのも、綾乃のスマホの通信を遮断したのも全部アネットの仕業だ。
『ソフィア! アネットが魔法をかけ続けている!』
「えぇ……! ですが、命を助けなくては……!」
ソフィアがアネットの魔法の一部を解こうとするも、アネットが再び魔法をかける。
「うがぁああっ!!」
──治癒魔法を止めた!?
男の腹痛は増し、呼吸も荒くなる。
「大丈夫、落ち着いてくださいませ!」
ソフィアはアネットの魔法を解除する暇もなく、男たちの治療に魔力を注いだ。
『これじゃ治癒魔法だけで精一杯だ……!』
事を全て把握しているアネットだが、白々しくソフィアに近づいた。
「嫌だわ! これって食中毒じゃない!?」
アネットの一声で大会は一時中断された。騒動を聞きつけ、通信環境が遮断されていると知った松田は、ボーイに「外でお願いしてこい!」と店外に行くよう指示するも、ボーイは扉の把手を握ったまま動かない。
「何してるんだ!」
「扉が開かないんです!!」
「そんなわけないだろう!」
松田は全体重をかけ扉を押し開けようとするが、びくともしない。
「一体、何が起っているんだ!? くそっ、せめて応急処置の方法を調べて……いや、ネットが繋がっていないんだった……!!」
どうすることも出来ない状況に松田は頭を抱えた。
『ソフィア、この人たち死んじゃうよ……!』
──どう頑張っても、私はアネットに勝てないというの……!?
断崖絶壁に立つソフィア。海に落とされ溺れ死ぬしか道はないのか。焦燥感に駆られるソフィアに対し、アネットは追い討ちをかける。
「もしかして大会を利用して爆儲けを考えていたんじゃないでしょうね? 賞味期限切れの食べ物でも出していたの?」
「そんなことしないわ!」
「では、その男性が倒れているのはどう説明をつけるの? あなた方のキッチン、衛生管理が悪いんじゃなくて?」
『クリスタルリップスは倒産。雅也も麻妃も私たちが手配した場所に送り込み、すずは一生苦しんで生きる……ははは、最高ね』
『晴子……!!』
リュクスラブのオーナーになった晴子としても、業績の良いクリスタルリップスの存在は邪魔だ。ここで倒産に追い込めば、リュクスラブに客足が戻る。
「ソフィア。残念だけれど、勝負はここで終わりね。とっても楽しかったわよ。ご来店いただいた皆様も本当にありがとう。クリスタルリップスは……もしかしたら営業が続けられないかもしれないけれど、リュクスラブで皆様のことをお待ちしているわ」
『ふふ、いい気味』
リュクスラブの告知をしれっと挟みつつ、大会を強制終了させようとした。
『そんな……!』
──私は雅也と麻妃さんを救えなかったの……!?
食中毒の一件も恐らくアネットの仕業であろうが、倒れた客からは魔力を感じなかった。やはり本当に衛生的な問題なのだろうか。
「こんな店にいられるか! リュクスラブで飲み直しだ」
村上は退店しようとするが、綾乃とくるみが止めた。
「村上っち~、くるみたちとまだ飲みましょうよ~」
「そうそう。こんな二日酔い対策のドリンクまで持ってきてるのに~」
「くるみさん、綾乃さん……!?」
綾乃は村上の胸ポケットから、液体が入った小瓶を取り出した。綾乃は瓶の蓋を開け、くんくんと鼻で嗅いでみる。
「これ、なんか臭い! 栄養ドリンクじゃなくない?」
「もしかして、これを酒に入れて腹痛を起こさせたの? アネットにどれだけ貢がれたわけ、あんた」
「あら、失礼ですわね。私はそんな卑怯なまねしませんわ」
「そう。じゃあ、飲めるわね。はい、あ~ん」
綾乃は村上の口に小瓶を近づけ飲まそうとするが、村上はそれを手で払い全力で拒否した。
「の、飲みたくない!! アネットがやれと言ったんだ! 俺は悪くない!!」
「何を言ってますの? 私、そんなこと言ってませんけれど?」
「ふざけるな! 俺はアネットのために一肌脱いだ! なのに……これじゃ俺が捕まってしまうじゃないか!! アネットを抱けない!」
「あらやだ、抱かれるなんて絶対嫌よ」
「くそっ……くそっ……!!」
暴れる村上はボーイに抑えつけられ、地面に伏している。
「友人を利用するなんて、最低」
地面に伏せられた村上の頬をくるみがツンツンと突きながら、蔑んだ。
「ふん、こいつらのことなんか知らん! 一時間三千円で借りたレンタルフレンドだ!!」
「寂しいヤツ」
クリスタルリップスからアネットに矛先が向けられたが、確証はない。このままでは、ソフィアの敗北は決定し、クリスタルリップスも廃業に追いやられてしまう。
「面倒なことになったわね……。とにかく、この勝負は私の勝ちですから」
『ふん、口ほどにもなかったわ。リュクスラブに戻ろう』
アネットはパチンと指を鳴らし、扉を開けると──
「おや、勝負はまだついておらんぞ」
麻妃と雅也、そして神川会長が姿を現した。
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