暗転した先は

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◇ 「唯奈の病態は、やはり」 琉唯は呻くように医師に尋ねる。医師は首を横に振った。 「確実に病状は進行しているようです。それもスピードが速い。本人は自覚がないのか拒絶しているのか……そろそろ生活も改めないと難しいのではないかと思います」 医師の言葉に琉唯は一つの希望を見出すかのように、再度尋ねる。 「生存率はゼロではないのでは」 その言葉に医師は表情を変えず、「ゼロではないですが、岡崎さんの場合は進行している時点でゼロに近いと考えます」と告げる。 琉唯にとっては死刑宣告にも等しい言葉だった。 どうやったら治るのか……。 今までどれだけこの言葉をぶつけてきたのか──もう諦めている自分が居る。 医師もそこは分かっていることもあり、「延命を第一に考えていきましょう」と提案した。 「仕事ももう辞めた方が体の負荷も少なくていいと思います。それと同時に『終活』することも有効なのでは」 「終活──か」 最初は医師に喰って掛かってきた琉唯も今では落ち着いた者であった。 琉唯は考え込む。 そして医師に対して「悪いが転院したい」と提案してきた。 「知り合いに医師がいるんだ。そいつの力を借りようと思う」 「分かりました」 医師は怒ることもなく淡々と承諾する。 「それじゃあ、また詳しい事は」 そんなことを告げ立ち上がる。傍にいた者に口添えしその場を去る。 「今日の謝礼です」 琉唯からの口添えを受けた者はそう言うと、棟ポケットから分厚い封筒を差し出した。 医師は何も言わずそれを受け取ると、机の引き出しへ素早く入れる。 その場の雰囲気は何もなかったかのように、流れていた。
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