あなたに逢えて、本当によかった。

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 私はまたすぐ走って、純平くんが待っているだろう空き教室に向かった。息切れは止まらなかったけれど、私もちゃんと伝えないといけない。気持ちに、応えないといけない。 「ごめん、待たせて」  飛び込むように教室に入ると、純平くんは窓の外を見ていた。すぐに振り返る。 「ちゃんと、答えるね。…今は、付き合うとかまでは頭が追い付かないから、保留にしていい?その代わり、名古屋に行ったらちゃんと遊ぼう。色んなところに行って、一緒に笑って。そうしてるうちに好きになるかもしれない」  そう、好きになるかもしれない。彼はもう、ヒーローでもアイドルでもない。一人の男の人としてちゃんと見てみようと思った。私なんかじゃ手が届かないと思っていたけど、そんな人が私を好きと言ってくれるのなら。 「それは…いいの?まるで付き合ってるみたいなことになる気がするんだけど」  戸惑うように彼が言う。 「私ね、ずっと純平くんのことをヒーローだと思ってたの。クラスに馴染めない私を、仲間に入れてくれた。神崎さんの噂の時もみんなから神崎さんを守ってくれた。私には手が届かない人だと思ってた。それに、私好きな人がいたの。一年の頃からずっと。叶わないって分かってたから、後悔も未練もない。純平くんが告白してくれたから、私も心残りがないように清算してきた。だから、前向きに考えたいと思ってます。…こんな答えでもいいかな」  へへ、と笑って私は純平くんの反応を見た。彼は思いがけない答えに驚きと喜びの表情をしていた。 「いいの、はこっちの台詞だよ!ありがとう。俺はヒーローなんかじゃないし、そんなに格好良くもないけど、今までみたいに佐伯とまた話せて遊べるなら大歓迎だよ。本当に本当にありがとう。あーー、緊張したー。帰ってこないんじゃないかと思ったよ。高山といるの見えちゃったし」 「あ、見られてたんだ。ごめん」  告白されたのに、他の男の子とどこかに行ったらそう思うよね、と私は申し訳なくなった。 「いや、いいんだ。お陰で、今こうして佐伯が戻ってきてくれてるんだし」 「背中を押してくれたのは純平くんだよ」 「俺?」 「どうしても伝えておきたかったって言われて、私もやっぱり伝えるだけ伝えたいって思ったの。後悔しないように。だから、ありがとう」 「いや、そんな…こっちこそ、ありがとう。保留でも嬉しい。じゃ、また名古屋でも会おう。それに春休みが残ってるし、遊べるだけ遊ぼう」  なんとも良い卒業式になったなと思った。私の門出は明るそうだ。純平くんとも写真を撮って、それをLINEですぐに送った。宝物にする、と彼が言うのを見て、可愛いなと思ったとき、胸がギュッとなったのは言わないことにした。これからが楽しみだな、そう思ったのだった。
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