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ついにこの日が来た。
清楚なワンピース。
清潔感のある髪型。
ナチュラルなメイク。
アクセサリーは上品で控えめなもの。
雑誌やインターネットで調べた情報をもとに、悩みに悩みぬいた服装。甘いものが好きって聞いたから、手土産は私の地元で有名な焼き菓子。
「莉帆、そんなに緊張しなくて大丈夫だって。うつるから出来れば普通でいてほしいんだけど」
「そんなこと言われても無理。悠真だってウチに来た時ガチガチに緊張してたでしょ」
「まぁ、そうなんだけどさ。そろそろ押していい?」
頷くとピンポーンと音が鳴った。
足が震える。でも笑顔だけは崩さないようにしなきゃ。
上品に挨拶。
上品に挨拶。
上品に……
「はーい。いらっしゃい。莉帆さん、遠いところ来てくれてありがとう」
初めてお会いした悠真のお母さんは、とっても優しそうな人だった。雰囲気が悠真と似てる。って、こんなこと思ってる場合じゃない。
「は、初めまして! 高木莉帆と申します! つまらないものですが皆様で召し上がって下さい!」
緊張のあまり、ものすごい勢いでお辞儀しながら紙袋を差し出してしまった。
あんなに練習したのに私のバカ。
出だしからやらかしてしまって、頭が真っ白になる。顔が上げられない。
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