キミのおかげ

1/3
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
ついにこの日が来た。 清楚なワンピース。 清潔感のある髪型。 ナチュラルなメイク。 アクセサリーは上品で控えめなもの。 雑誌やインターネットで調べた情報をもとに、悩みに悩みぬいた服装。甘いものが好きって聞いたから、手土産は私の地元で有名な焼き菓子。 「莉帆(りほ)、そんなに緊張しなくて大丈夫だって。うつるから出来れば普通でいてほしいんだけど」 「そんなこと言われても無理。悠真(ゆうま)だってウチに来た時ガチガチに緊張してたでしょ」 「まぁ、そうなんだけどさ。そろそろ押していい?」 頷くとピンポーンと音が鳴った。 足が震える。でも笑顔だけは崩さないようにしなきゃ。 上品に挨拶。 上品に挨拶。 上品に…… 「はーい。いらっしゃい。莉帆さん、遠いところ来てくれてありがとう」 初めてお会いした悠真のお母さんは、とっても優しそうな人だった。雰囲気が悠真と似てる。って、こんなこと思ってる場合じゃない。 「は、初めまして! 高木莉帆と申します! つまらないものですが皆様で召し上がって下さい!」 緊張のあまり、ものすごい勢いでお辞儀しながら紙袋を差し出してしまった。 あんなに練習したのに私のバカ。 出だしからやらかしてしまって、頭が真っ白になる。顔が上げられない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!