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 「北見家を守護するもの……?」  「あの家は、ずっと昔から長として村のあれこれを取り仕切っていたらしいんですよ。ちょっとした豪族みたいなものですかね? まあ、村自体はどんどん衰退していったようですが」  「17年前のその事件の頃も、やはりその……村長っていうんですか? そういう立場だったんでしょうか、北見家の人が?」  「いや、正式な村長はちゃんと選挙で決められていたようです。ただ、北見家と近しい人達が担っていたみたいですね。詳しい政治的なことまではわかりませんが、昔ながらの、地縁とかが力を発揮する土地柄だったんでしょう」  なるほど、と頷く雅。北見響希は、そんな権力者の末裔だったのか。どちらかというと(つつ)ましく感じられた姿からは、あまりイメージがわかなかった。  「ただ、それまでも過疎化もあり衰退していた村でしたが、更に加速したみたいな感じでしたね。北見家も病気やら事故で人が亡くなっていき、確か残ったのは娘さんだけになったとか。廃村の頃には、あの事件の時に蔵が開けられ守護するものが外へ行ってしまったから、十分守りきれなくなったんじゃないか、なんていう話をする人達もいました」  「蔵って殺人事件が起きた場所ですね。そこが開けられたから? どういうことですか?」  雅が質問する前から、滝田はいくつかある資料を見比べ、何かを探していた。応えるかのように一冊を開いて見せる。  「その蔵に、北見家を守護するものは祀られているらしい、という噂だったんですよ。で、事件の日、北見家のお嬢さんとその友達が夕方から夜にかけて行方不明になっていたんですが、それはご存じですか?」  「はい。そのことについてもお聞きしたかったんです。北見響希さんと島本一馬さんですね?」  「そうです。その2人に話を聞いた記録が、これです」  写真なども貼ってあった。幼少期の頃の2人だ。事件資料ではあるが良い笑顔に見えた。
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