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 モニターに被害者2人の顔写真とプロフィールが映る。  江藤孝史22歳、そして松岡裕吾23歳。村出身で一時他市で暮らしたこともあるが、当時は戻ってきていたらしい。両者ともどこか険のある顔つきだ。  「滝田さんは、その北見家の蔵での事件を担当なさったんですか?」  「ええ。といっても、末端の捜査員の一人でしたけどね。2人も惨殺された大事件ですから、捜査体制はそれは大がかりなものでしたよ。結局誰が殺したのか、わからないままですが……」  黙って頷く雅。そう、これも未解決事件なのだ。そして特異な案件でもある。  「容疑者も目撃者も、ほとんど捜査線上にあがってこなかったという話ですが、それも不思議ですね」  「そうですねぇ、田舎の村で人がそもそも少ないから目撃されなかった、と言われればそれまでなんですが、いくらなんでもあの殺され方なのにねぇ。不思議でしたよ。それに……」  資料をめくりながら喋る滝田の表情が、一瞬曇る。  「それに? なんでしょう?」  「村の人達の言うことがねぇ、妙なんですよ。あの被害者の2人は(バチ)が当たったんだ、と。犯人はいないよ、だって天罰が下ったんだから、と。そんなふうに真面目に話す人が多かったんですよ」  「天罰が下った……?」  疑問をそのまま表情に浮かべる雅。  「実際、2人は素行も悪かったらしいんですけどね。高校を卒業して川崎の方にそろって出て行ったんですよ。だけど、そこで同じ職場で働きながら、裏で恐喝や暴力行為があって逮捕されて、当然仕事はクビ。で、村に戻ってきても無職で、ワル仲間の知り合いから譲り受けた車を乗りまわしてあちこち遊びまわったり、悪さを繰り返していたようです」  「だから、(バチ)が当たったと……。まあ、そう言いたくなるくらい迷惑を被っていたと言うことでしょうか」  「いや、それが、本気でそう思っているらしかったんですよ、ほとんどの村人達が。あれは、村の長である北見家を守護するものが、罰を下してくれたんだって言うんです。村の雰囲気そのものが、あの事件は人が起こしたのではない、だから犯人なんていない、ってはなから決めてかかっている感じでね」
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