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 「久し振りに読みますが、いやぁ、不思議なんですよね」  滝田は一度こちらに見せた資料を手に取り、自ら目を通しながら説明を始める。親切な人だな、と雅は感謝の念を持った。  「なんでもその蔵は、ずっと昔、室町時代からのものだそうです。もちろん何度も建て直したり改装したりしたんでしょうが、その場所にずっとある。おかしな造りで、奥が山につながっているんですよ。山の地下へと続いていた。洞窟みたいになっていて、その先に部屋がありました。何に使われていたのか、北見家の人達に訊いても単に物置だとしか応えませんでしたが、そうは見えなくてねぇ。で、子供達の証言によると、そこに首なしの骸骨があったと……」  「首なしの骸骨?」  思わず息を呑む雅。  滝田の説明が続く。子供達の話では、北見家に骸骨の頭の部分、つまり髑髏(どくろ)があり2人してそれを持ち出して蔵に忍び込んだらしい。そして奥の、山の地下になる辺りまで進んだところ、不思議な札が貼られた部屋に行き着き、そこに首なしの骸骨があった。そして、髑髏と呼び合うかのように動き出し、2人は追いかけられた。骸骨は次第に黒い(もや)を纏い、鬼のような異形の化け物になった……。  「逃げる際に、殺された2人を見ているんですね?」  「ええ、おそらく、子供達が蔵を開けたので忍び込みやすくなっていたんでしょう。盗みに入っていたらしいんです」  だが子供達はその脇をすり抜け、森へ逃げた。そして崖から落ちて気を失う。  「ただ、北見家の大人達は、髑髏についても骸骨についても否定したんです。そんな物はない、と。実際、事件後どこからもそれらは見つかっていない……」  子供達の証言は、幻覚のようなものだと判断されたらしい。病院でも治療を受けたようだ。医師もそう話しており、診断書も添付されている。
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